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専門家寄稿記事 ブランドはどのようなときに必要なのか

ブランドが必要な理由
ブランドはビジネスにとって常に必要なのでしょうか。必ずしもそうではありません。
ブランドが必要な理由のひとつは、買い手にとってブランドから得られる情報が必要あるいは重要な場合です。もしも購入の意思決定においてブランドがなくても意思決定できるのであればブランドは必要ないことになります。
例えば、次のような場合を考えてみましょう。輸入のお菓子ばかりがずらりと並んでいるお菓子屋さんに行ったとします。そのようなとき、お菓子がどれも魅力的に見えたとしても、輸入菓子のブランド名をほとんど知らないのであれば、ブランドは買い手にとっては役立たないことになります。

そういうとき、買い手はどうするでしょうか。お菓子の「原産地情報」が役立つかもしれません。例えば、ベルギー製のチョコレートならば美味しそうだとかです。あるいは、パッケージのデザインや色味をみて買うかどうか決めるかもしれません。ブランドが役立たたないとき、買い手は他の情報手掛かりを求めるのです。
取引の自由
ブランドが必要ではない場面があるもう一つの理由は、取引に自由がない場合です。売り手も買い手も取引に際して何らかの制限を課されているために、自由に取引ができないような場合です。
例えば、三菱や三井のような旧財閥グループ企業同士では、グループ内で取引が行われる場合があります。そういうときは、三菱や三井というブランドがあるにしても、それらのブランドが有効に働いて取引に役立つということは考えにくいのです。つまり買い手にとって取引に自由な選択がなければブランドは機能を果たさないのです。
探索財
ブランドが働かない場面がある三番目の理由とは財の性質です。買い手が商品を見て、その商品から直接得られるブランド以外の情報だけで品質などがわかってしまう場合、ブランドはやはり必要ではありません。

野菜・魚・肉などの生鮮食料品に、一部を除いては、ブランドがあまり存在しないのはこうした理由によります。こうした商品カテゴリーでは、買い手である消費者は店頭で商品を手に取れば、おおよそ悪くないものかどうかは判断ができます。釘や小麦粉のような付加価値の低いコモディティと呼ばれる素材に近い商品の場合も同じことが起こります。
こうした財は買い手が事前に品質を見分けられる「探索財」と呼ばれるカテゴリーです。探索財の場合、買い手はブランドから得られる情報に依存しておらず、自分の眼を信じているとも言えます。
それでは上記のような業種では永久にブランドは必要ないのでしょうか。そんなことはありません。状況が変化すればブランドが必要になることがあります。
日世の事例

「日世」というソフトクリームのマシーンと材料を提供しているメーカーがあります。日世は長い間、自社のブランドをほとんど育成してきませんでした。なぜならその必要性がなかったからです。日世にとっては街でソフトクリームを売っているお店のブランドが重要で、「黒子」である日世の名前をことさら強調する必要はなかったのです。
ただし、時代が変化して日世もブランドの必要性を感じるようになってきました。それは従来の小売店やレストランだけでなく、ヒルズのような都市型モールやクルマのディーラー、お花屋、お寺、神社、パワースポットなどの新しい業態が出現するにつれて、こうした新しいチャネルでより付加価値の高いソフトクリームを販売する必要が出てきたからです。
クレミアの開発
そこで日世が考えたのは、より高級な材料を用いて、より高額でも買ってもらえるようなソフトクリームを開発することでした。2013年に誕生したのが「クレミア」というブランドでした。「プレミアム生クリームソフト」というポジショニングを持ち、高級な生クリームや乳成分を用いて、ラングドシャコーンに入れ、メーカー小売り希望価格が500円という製品です。クレミアは大きく日世の業績に貢献しました。
このストーリーにあるように、より付加価値が高く、買い手からチョイスされる製品を販売するためにはブランドが必要となるのです。この意味で、ブランドはビジネスの転換期にこそ考えられ、実践されるべき事業戦略として考えることができるでしょう。
