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専門家寄稿記事 ウェブでのブランディングと「売り」

ブランドをつくることと、「売り」とはしばしば矛盾した関係と受け止められることがあります。例えば、高級なファッションブランドのことを考えてみましょう。もしも高級なファッションブランドが自社の商品価格を大幅に切り下げて売り始めたら何が起こるでしょうか。その結果は容易に想像がつきます。まず、多くの人がその「バーゲンセール」に飛びつくでしょう。それまであこがれのブランドだったものが安く手に入るのですから。次に何が起こるかも自明です。再びその高級ブランドが価格をもとの高価な価格に戻しても、元のような売れ行きはのぞめないでしょうし、そのブランドの高価な価格を信じる人も少なくなることでしょう。

それでは強いブランドと売れることとはどのような関係にあるのでしょうか。喩えで考えてみましょう。ボーリングをプレイするとき、良いスコアを出すためには「スパットを見て投げろ」と言われた経験はないでしょうか。スパットとは、レーンの中に三角の形で刻まれた7つの印のことを指します。スパットは当然、投げるボーラーから見て手前にありますので、そこを通すことはピンを直接狙うよりも易しくなります。

ボーリングでピンを倒すことを「売り」と考えれば、ブランドは「スパット」のようなものです。つまり、スパット=ブランドを狙うことは、売れる=ピンを倒すための必要条件なのです。もちろんスパットを狙っただけでピンが倒れる保証はありません。強いブランドであるからと言って、必ず売れるわけではないのです。

ブランドが強くても売上が伸び悩むことは珍しくありません。ビジネスサイクルの早いインターネット関連ビジネスではことにそのようなことが言えます。飲食店情報サイト「ぐるなび」の苦戦が2019年3月決算で伝えられています。ウェブの記事によると決算が悪化した要因は次のように記されています。

「今の時代に合わせたユーザ体験や機能(ネット予約やポイント対応)、店舗側のニーズ(情報検索手段・販促手段などの対応遅れ)のキャッチアップの遅れは、「ぐるなび」ブランドの影響力低下に直結」(「ぐるなび「最終利益8割減」決算の衝撃。再起のカギはパートナーの“楽天”か」2019)

「ぐるなび」は1996年に創業されたこの種の情報サイトでも、もっとも老舗のサイトのひとつと言っても間違いありません(注)。「ぐるなび」の知名度や連想についてはすでに高いものがあると想定されます。しかしながら、このウェブの「使用体験」やネット予約・ポイント対応の遅れが、ぐるなびの総合的ブランド力の低下を招いているのです。

ウェブの世界では、ブランドネームの力をアップさせるだけでは不足しています。プレミアムブランドの世界のように、ブランドの伝統や歴史を誇ることも十分ではありません。ユーザ経験を改善し、そのときどきに要求される機能要件を満たすことが求められており、その意味ではウェブブランドの構築とは「常在戦場」、つまり常に気を抜くことなく事に当たる必要があるタスクなのです。別の言い方をすれば、ブランド力の定義を自ら常に更新する必要があるのがウェブブランドなのです。

(注)なお、同じカテゴリーである「ホットペッパーグルメ」は、2009年にグルメサイトとして、「ホットペッパーFooMoo」となり、次いで2010年に現在の「ホットペッパーグルメ」になった。また「食べログ」は価格.com〈1997年創業〉が2005年に立ち上げている。

■参照文献:

「ぐるなび「最終利益8割減」決算の衝撃。再起のカギはパートナーの“楽天”か」Business Insider Japan. (2019/5/14)
https://www.businessinsider.jp/post-190659?fbclid=IwAR0J-tWn4wmnHfl9eWeCvQdr-8DP2Gl4RJ5bIGwF_mNEhgtYoNuEx4yrtbw
(2019/5/15 アクセス)

「はじめまして、グルメサイトのFooMoo(フームー) です」Hotpepper.jp (2009/6/25)
http://www.news.hotpepper.jp/2009/06/foomoo-open-e99.html

「『ホットペッパー FooMoo』が『ホットペッパー グルメ』にブランド変更」株式会社リクルート(2010/10/28)
https://recruit-holdings.co.jp/news_data/release/2010/1028_1795.html

「カカクコムの歩み」
https://corporate.kakaku.com/company/establishment

著者プロフィール

田中 洋 Hiroshi Tanaka 中央大学大学院
戦略経営研究科教授
日本マーケティング学会副会長

京都大学博士(経済学)
(株)電通 マーケティング・ディレクター、法政大学経営学部教授、
コロンビア大学大学院ビジネススクール客員研究員などを経て2008年4月より現職。
消費者行動論・マーケティング戦略論・ブランド戦略論・広告論に精通し、 多くの企業でマーケティングやブランドに関する戦略アドバイザー・研修講師を勤める。
その著作・研究活動により、日本広告学会賞を三度、中央大学学術研究奨励賞、 また東京広告協会白川忍賞特別功労賞を受賞している。
http://hiroshi-tanaka.net/

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