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専門家寄稿記事 変革できない企業は滅びる ―その解決策を戦略的インターナル・ブランディングの視点から考える―

企業変革の重要性

「脱皮できない蛇は滅びる」この言葉が持つ意味を、組織進化論的視点から考えてみると、「変革ができない企業は滅びる」という言葉で置き換えることができます。すなわち、企業組織は、外部環境の変化に適合しない古い考え方・価値観・体質づくりに固執しすぎると、次第に内側から個々人の意識改革や成長欲求が止まり、その結果、市場から淘汰されてしまいます。そのため、企業組織は、常に外部環境の変化に対応できるような新しい考え方・価値観・体質づくりに積極的かつ主体的に取り組まなければなりません。同時に、従来の組織ルーチンや組織能力から新たな変化と価値を創出する企業変革を推進することで、組織内の新陳代謝を活性化させ、更なる進化を遂げることができます。

今日の企業は、不確実性がきわめて高い外部の市場環境の変化に対して、柔軟かつ迅速に対応できるような組織能力を高めなければなりません。しかし、それを阻むいくつかの要因があります。たとえば、次のようなものが挙げられます。

➀ セクショナリズム・官僚主義的な縦割り組織による社内コミュニケーションと情報共有の不足、一体感の欠如
➁ 企業トップのリーダーシップ不足による社内の理念定着率の低さと実行力の不足
➂ ➀と➁による社員の自社に対する組織コミットメント・社員エンゲージメントの欠如、モチベーションの低下と離職率の高さ
など

それゆえ、企業は、上記の「大企業病」のような成長の阻害要因を解決しない限り、企業変革の実現と自社ブランド価値を向上させることはできません。

企業は、規模が拡大されていくにつれ、現状満足と危機意識の欠如により、成長志向のマインドがかなり低下します。同時に、経営者と社員間または部門間のコミュニケーションが不十分な状態または断絶され、意思決定が遅れてしまいます。通常、このような企業の体質は、大企業の組織内でよく見受けられる硬直的かつ非効率的な組織構造であるといえます。しかし、「大企業病」は、大企業だけでなく、中小企業においても十分起こり得ます。すなわち、中小企業にも、このような企業の体質が組織内で長年にわたり蔓延すると、官僚主義的な考え方に基づいた縦割りの組織構造や事なかれ主義などが生じてしまい、企業変革を阻むことになりかねません。

企業は、上記の変革と成長の阻害要因を解決するという共通の目的と戦略的意図を組織全体に明確に示さなければなりません。それと同時に、企業は、全社員の意識改革をはじめ、創発的な学びの場のマネジメントの実現、組織内で自社独自のブランド・ビジョン(Brand Vison:以下、BVと表記)の確実な浸透と体現、その実践などを可能にする企業変革を実行しなければなりません。

企業変革の推進における戦略的インターナル・ブランディングの普遍的なプロセス

本コラムでは、リーダーシップ論や企業変革論の世界的な権威であるKotter氏が提唱した企業変革における8段階プロセスの視点から、企業が実行可能な戦略的インターナル・ブランディング※(Strategic Internal Branding:以下、SIBと表記)の普遍的なプロセスを提示します(図1参照)。とりわけ、企業が企業変革の一環としてSIBを組織的に推進していく際に生じうる阻害要因と促進要因の解明を中心に述べます。

※戦略的インターナル・ブランディング(SIB)とは、「自社独自のブランド理念とブランド・ビジョンを中長期的な視点から、部門横断的な連携やコミュニケーションを通して、外部のステークホルダーに対して体現できるよう全社員に理解・共感・共有してもらうために全社的に取り組む諸活動」である。

 (出所) 徐・李(2020)、名古屋経済大学経済経営論集 第27巻第2号24ページ

第1段階での阻害要因は、現状維持で満足し企業変革を嫌う経営幹部や社員といった抵抗勢力の存在です。これを解決するためには、企業トップや経営幹部をはじめ、全社員に自社を取り巻く現状の客観的な分析と成長機会を「見える化」し、危機意識を醸成することが重要です。同時に、SIBの重要性や必要性に対する肯定的な態度や意識改革の醸成も促進要因として考えられます。

第2段階での阻害要因は、多くの社員のブランディングやSIBに関する重要性や認識がきわめて低い点と、それらに関する専門知識やスキル、ノウハウがほとんど蓄積されていない点です。また、全社員に強く共感してもらえるような明確な自社独自のBVを、組織全体に確実に浸透させる組織能力を持つチームがないことも考えられます。とりわけ、中小企業の場合はなおさらです。これを解決するためには、企業トップの積極的な支援を得、外部のブランディング専門家を迎え入れ、企業内部の次世代の経営幹部や各部門のリーダー候補を部門横断的に結成する自社ブランド推進プロジェクト・チームの存在が促進要因として考えられます。

第3段階での阻害要因は、複雑で曖昧なBVのまま、SIBを行うと、経営者と社員間または部門間で、常に対立が生じ、非効率な会議などが繰り返されてしまう点です。これを解決するためには、多くの社員から納得・賛成・共感してもらえるような明確かつわかりやすいBVを確立することが重要です。また、組織内における共通の目的・理解・認識・言語をつくり出すことで、多くの社員からさまざまな意見・情報・感情の交換を促すことも促進要因として考えられます。

第4段階での阻害要因は、BVを浸透させるための社内コミュニケーション不足をはじめ、短期的な視点による組織内におけるBVの浸透の判断、数人の経営幹部によるBVに相反する不適切な言動です。これを解決するための促進要因としては、社内コミュニケーション・ツールを最大限に活用することが挙げられます。たとえば、次のようなものがあります。

➀ 企業トップや経営幹部によるBVの体現の内容を中心とした社内報、
➁ 現場のミドル・マネージャーやその他の社員を中心としたブランディングやSIBに関する社内研修会
など

第5段階での阻害要因は、縦割りの組織構造による経営資源の配分と権限移譲、社員の能力不足による行動、人事や情報システムの不整合による社員の行動、企業変革に抵抗する経営幹部による社員の行動といった制約です。これを解決するためには、SIBの立案・策定における全社員参加型の仕組みの構築、SIBと業務計画の間の整合性をはかるための仕組みの構築、SIB実行を支える権限移譲、SIB実行の成果連動型の報酬制度の構築が促進要因として考えられます。

第6段階での阻害要因は、企業トップの強いリーダーシップと積極的な支援・関与が途切れる点と、新しいBVの推進に対するネガティブな認識を持っている抵抗勢力の存在です。これを解決するためには、BVの体現を通して、企業トップと経営幹部をはじめ、中間管理者、現場担当者に納得してもらえるような具体性のある短期的な成果の「見える化」が重要です。また、SIBの全体的な変革の方向に明確に関連づけられるような短期的な成果の提示も促進要因として考えられます。

第7段階での阻害要因は、重要な変革推進者の人事異動、すなわち、プロジェクト・チームの中で、きわめて重要なチェンジエージェントの役割を果たすリーダーたちの短期間での人事異動です。これを解決するためには、企業トップの強力なリーダーシップの発揮によるチェンジエージェントの役割を果たすリーダーたちの在任期間の長期化(5年以上)が促進要因として考えられます。

第8段階での阻害要因は、企業変革を通して採用された新しい実践と企業文化との衝突により、ブランディングやSIBの重要性や必要性が薄れてしまい、企業文化として定着されない点です。これを解決するためには、BVの体現が業績改善にどれぐらい貢献したのか、客観的なデータに基づき、多くの社員に確認させるコミュニケーションの場を設けて、繰り返し議論し伝えることが促進要因として考えられます。

※本コラムは、徐誠敏・李美善(2020)「企業変革の推進における戦略的インターナル・ブランディングの普遍的なプロセスに関する研究:Kotterの8段階プロセスの視点に着目して」『経済経営論集』第27巻2号をベースとしています。

https://nue.repo.nii.ac.jp/records/444

著者プロフィール

徐 誠敏 Sung Min Seo 名古屋経済大学 経営学部 准教授
元・静岡産業大学 情報学部 非常勤講師
企業ブランド・マネジメント戦略論の研究室代表
元・中央大学 商学部 兼任講師

中央大学博士(商学)
1994年、韓国にてソローアルバムを発売し、歌手デビュー(各種ラジオ番組に出演)。
日韓の企業の現場経験やインタビュー、理論構築などをベースに、戦略的なインターナル・ブランディングやマーケティング、需要探索型イノベーションなどを研究。
中小企業のブランド戦略にも知見がある。
最近は5現主義(現場・現物・現実+原則・原理)に重点を置きつつ、理論と実践を両立することに注力している。

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