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専門家寄稿記事 ブランドコミュニケーション2020-2021

■今年の振り返り

今回の連載では、2020年のブランドコミュニケーションの状況を振り返りながら、2021年以降の展望を考えてみたいと思います。(予定していた「デジタル時代のブランド戦略その2」については次回以降に変更します)

2020年で最大の事件といえば、誰しも新型コロナのことを考えるでしょう。新型コロナ禍はブランドコミュニケーションにも大きな影響を及ぼしました。緊急事態宣言がなされた4月ごろには、広告類が街角からも取り去られ、異様な状況が出現しました。大阪梅田の地下街では柱のサイネージュ広告が消え去り、「ディストピア」のような様相を呈したとも伝えられています。一瞬ではあれ、また私たちは広告が街角から消え去る瞬間を目撃してしまいました。

このような状況にあって、自宅滞在時間が長くなり、おのずからメディアの視聴時間は長くなりました。東京女子大学の橋元良明教授によると、2020年の3月から4月にかけて、テレビの視聴時間は154.5分から165.1分に伸び、パソコンでのネット利用時間は146.3分から152.6分になり、スマホでのネット利用も80.8分から86.9分に増加したということです。おおむね4-8%程度、メディアとの接触時間がコロナによって伸びたと言えます。

■ブランド・エクスペリエンス

ブランド構築にとって、メディアとの接触時間が長くなったのは機会とも言えますし、リアルな消費者とのコンタクトポイントが減少したことはマイナスにも働きます。近年のブランドの顕著な動きの特徴とは、ポップアップストアやイベント・展示会などリアルな場でのブランド経験施策の増加です。メディアを通じて、リアルなブランド経験を達成できるかが今後、より重要な課題になると考えられます。

高級スポーツカーブランドのポルシェは「ポルシェ エクスペリエンスセンター東京」を2021年夏に千葉県木更津市にオープンすると今年発表しました。こうした「エクスペリエンス」を重視したブランド活動がこれからもいっそう盛んになることが予測できます。

今年発表になった電通の「日本の広告費 2019年」では、インターネット広告費がテレビ広告費を追い抜いたということが話題になりました。インターネット広告費が2兆1千億円あまりになったのに対して、テレビ広告費は1兆8千600億円だったのです。これまでのインターネット広告費の伸びの趨勢から予測できたこととはいえ、実際にこうした事態が起こったことはそれなりに話題になりました。

興味深いことは、前記のブランド・エクスペリエンスの高まりに呼応したように、今回の日本の広告費の中に、「ポップアップストア、スポーツイベント、PRイベントなどの製作費」も含まれるようになりました。こうした動きは広告概念あるいはブランドコミュニケーション概念の拡張とも解釈できます。インターネット広告と、こうしたエクスペリエンス系活動とは緊密な関係があります。どのようにしてネットとリアルを結び付けていくかが2021年の引き続きの課題になるでしょう。

■ネット広告界の変化

しかし、インターネット広告がすべて万能なわけでもありません。今年の初め、ネット広告界で話題になったことは、グーグルが、「外部の企業が個人ユーザーのネット閲覧履歴などを把握する仕組みを2022年までに制限する」と発表したことです。その背景には、一部SNSによる個人データ乱用への懸念がありました。先々ではこうした検索広告大手のクッキー使用が制限されることが考えられます。そうしたとき、これまでのような運用型広告がどうなるのか、インターネット広告市場の動きが注目されるところです。

一方では、アマゾンが世界最大の広告主になったと伝えられています。これまで世界最大の広告主としてP&G(プロクター・アンド・ギャンブル)社がよく知られていたのですが、プラットフォーマーが巨大な広告主、つまりおカネを払って広告を出稿する企業になると同時に、広告メディア会社としても存在感を増しています。つまり、ブランドコミュニケーションの担い手として、プラットフォーマーがいっそうクローズアップされると同時に、FMCGの(消費財)パッケージブランドがブランドの中心であった時代が変化する兆しかもしれません。

■コンテンツをブランドに

今年最大の話題を呼んだコンテンツとして「鬼滅の刃」があることは言うまでもないでしょう。その背景として興味深いことはソニー傘下の「アニプレックス」がコンテンツを基軸としたビジネスモデルを築いていることです。アニプレックス自身は「ミニ・ディズニー」と言っていますが、コンテンツを知的資産として、ゲームと音楽などで重層的に稼ぐ仕組みを作っています。このような動きはコンテンツをブランド展開する手法として、今後の日本企業に必要なブランド戦略と考えられます。

また、鬼滅の刃については、ローソンやダイドードリンコなどがコラボしてコミュニケーションやプロモーション展開を行っています。これらのコラボも大きな成果を収めており、やはり今後のブランド展開手法として学ぶところが大きいと思われます。

■既存メディアの逆襲

一方で、レガシーメディアと呼ばれる既存メディアは、今年、コロナの影響を受け、広告収入の上で大きな打撃をこうむりました。そのような中にあって、日本テレビホールディングスは11月に今後の成長戦略を発表しました。その骨子は、「非放送事業の収入を伸ばし、2020年代半ばに全体の50%超とすることを目指す」というもので、「動画配信サービス「Hulu」を中心にテレビ以外での動画配信を拡大させるほか、オンラインのイベント事業を充実させる」と発表しています。

また出版界もすべてではありませんが、一部の出版社の好調が伝えられています。2019年に小学館、集英社、講談社はいずれも増収増益を記録しましたが、その理由は電子のコミック、マンガアプリ、版権ビジネスが伸びたためと考えられています。旧来のメディアもデジタルによって新たによみがえる傾向がうかがえるのです。

こうした動きは、今後のブランドコミュニケーションがどのようになるかを予感させます。従来のマスメディアが今後もコミュニケーション市場において一定の位置を保つことは間違いありませんが、同時に、動画配信やオンラインイベントが重要になってくるということを意味しているように思われます。またコンテンツを基軸とした展開がいっそう重要になることも疑いありません。

■キーワード

2020年のコミュニケーションの動きを踏まえて、2021年以降のブランドコミュニケーションの在り方を占うならば、キーワードは次の3つになるでしょう。

1)ブランド・エクスペリエンスの展開
2)コンテンツ重視のコミュニケーション戦略
3)非広告形態の広告活動

3)の非広告形態の広告とは、インターネットの検索型広告も含め、SNSを用いたブランド・アンバサダーやインフルエンサー、戦略PRなど、一見すると広告とは見えないような広告の形態を指します。さらに1)と2)の視点を含めて考えるならば、ポップアップストアやイベントのようなエクスペリエンス型の広告、人気コンテンツとのコラボ型広告、さらには映画広告(シネアド)のように、広告でありながら、他の広告とは異なり消費者の受容性の高い広告形態を考えてもよいでしょう。2021年以降のブランドコミュニケーションでは、広告と非広告形態の広告とを使い分けながらメッセージングを展開していく考え方がより重要になると考えられます。

【参照文献】

「広告が消えた梅田の地下通路「びっくりするほどディストピア」」ライブドアニュース
(2020/4/26)
https://news.livedoor.com/article/detail/18178851/?fbclid=IwAR3A8NRBtdN6BEjQ_D5hAHrSkZQ3-Xpt7MJ5ClTDIIhOVEpsSFiZVMUvlvg

「緊急事態宣言下、テレビが存在感増す 橋元教授に聞く㊤」日経広告研究所 (会員限定記事)
(2020/9/2) 
https://www.nikkei-koken.gr.jp/kokenreport/1745/

「2019年 日本の広告費」株式会社電通
(2020/3/11)
https://www.dentsu.co.jp/news/release/2020/0311-010027.html

「ネット履歴の仕組み、グーグルが機能を制限 個人情報保護を優先」日本経済新聞(有料会員限定)
(2020/1/16) 
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO54437490V10C20A1MM8000

「アマゾン、世界最大の広告主に」Campaign Japan
(2020/2/6)
https://www.campaignjapan.com/article/
%E3%82%A2%E3%83%9E%E3%82%BE%E3%83%B3-
%E4%B8%96%E7%95%8C%E6%9C%80%E5%A4%A7%E3%81%AE%E5%BA%83%E5
%91%8A%E4%B8%BB%E3%81%AB/458032?fbclid=IwAR0Wq9UPN43X2tvmSXOGRl80HXLsXWRZAbARxbBJn_
-OUIZBow2sP5ZeCl4

「放送収入の持ち直し、ほとんど見えず 〜キー局決算資料より〜」Media Border
(2020/11/18)
https://mediaborder.publishers.fm/article/23225/?fbclid=IwAR2hCw_wOS2kWIbUEIyaTm7j0mJ63BTwgf72fEajblgxGDtxl_-1dg-PQJQ

「民放3社、最終減益・赤字 4~9月、テレ東は増益」日本経済新聞
(2020/11/5)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65896040V01C20A1DTD000

「日テレHDが成長戦略発表 動画配信サービスの強化などが柱」読売新聞オンライン
(2020/11/9)
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20201105-OYT1T50255/

「出版市場の“22年ぶり復調”はなぜ起こった? ウェブと本の共生関係、その現在地を探る」Real Sound
(2020/11/5)
https://realsound.jp/book/2020/02/post-501804.html

「ポルシェがブランド体験施設「ポルシェ エクスペリエンスセンター東京」を2021年夏にオープン」自動車ニュース
(2020/11/24)  
https://www.webcg.net/articles/-/43674?fbclid=IwAR105ydLVgpiOeKkgTD1kfwos-8C0VbeySvqgYuNfBlXiUvz7Y5BY2wkgbU

「ソニー、アニメをエンタメの柱に 鬼滅の刃で切り開くSONYアニメ大国への道(上)」 日本経済新聞
(2020/8/3)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62195440R00C20A8X11000

「データで見る鬼滅コラボ商品 玩具菓子トップ10のうち4つ独占」Xトレンド
(2020/11/16)
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/watch/00013/01217/?i_cid=nbpnxr_index

デジタルシネアド・コンソーシアム(2020) 「広告メディアの受容性と質DAY1」Kantar Japan セミナー資料(2020/11/26)

著者プロフィール

田中 洋 Hiroshi Tanaka 中央大学大学院
戦略経営研究科教授
日本マーケティング学会副会長

京都大学博士(経済学)
(株)電通 マーケティング・ディレクター、法政大学経営学部教授、
コロンビア大学大学院ビジネススクール客員研究員などを経て2008年4月より現職。
消費者行動論・マーケティング戦略論・ブランド戦略論・広告論に精通し、 多くの企業でマーケティングやブランドに関する戦略アドバイザー・研修講師を勤める。
その著作・研究活動により、日本広告学会賞を三度、中央大学学術研究奨励賞、 また東京広告協会白川忍賞特別功労賞を受賞している。
http://hiroshi-tanaka.net/

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