知識を深める
専門家寄稿記事 ブランドは、ブランドのことだけ考えていてもダメ ~社会課題にどのように対峙し、デジタルでその価値をどのように伝えるか?~
1.社会的変化が大きい時ほど、根本からの見直しが必要
2021年になり、早くも1ヶ月が過ぎました。
新型コロナウイルス感染症の影響は、世界中で約1年の長期化となり、そんな中、アメリカでは大統領選挙がありました(この選挙に関しては、米メディアの隠ぺい・ねつ造報道があまりに酷く、実際には何があったのかレポートを作成しました。いつか機会があればどこかで公開したいと思います)。また日本を見てみると、とても国民のことを考えているとは思えない政権の姿があります。
世界や社会は例えコロナ禍が収束したとしてもその前と全く同じには戻らないでしょう。日本もアメリカなど海外に頼りすぎず、まず国として真の自立力強化が急務です。しかし、現政権は「政治の役割は公助」であるにもかかわらず、国民に「自助・共助・公助」を訴えており、各自(企業も個人も)は益々自立力を高めなければなりません。
企業も昨年、様々な模索をしたかと思いますが、今年からはもう中長期的に持続できるスタイルを確立していかねばならない段階です。
このような大変な時ほど、喫緊の課題に対処しつつも、早急な根本からの見直しが必要と考えています。
東日本大震災の時、自分は「これからは生活者の価値観が根本的に変わる。本当に大切なものは何か?と問われるようになる。当然、企業のマーケティングも変わるべき。」と考え、長年勤めていたマネジメント職からプレイヤーに復帰することを宣言し、ブランド・コンサルを始めました。
周りはどうだったかというと、同様に根本からの見直しをした方も沢山いましたが、全体的には「いずれ元に戻るだろう」という想定で、目の前の課題に対処しただけで、結局は震災前と変わらない状況に戻ってしまった印象があります。
今回はどうでしょうか?
今回も「早く元に戻らないかな。それまで我慢するしかないな」と思っている人はいるでしょうか?今回は流石にそうはいかないと思います。
そんな中、企業はブランドとして何をすべきか?
昨年から自分が掲げている2つのキーワード
「Social Good Branding 」「Brand × Digital」の観点からお話ししたいと思います。
2.キーワード①「Social Good Branding」
社会課題への対峙は、着眼大局着手小局で
既に協会も「ブランディングが社会を変える」というメッセージを発信していますので、これからのブランドは「市場のニーズ」というより「社会の課題」に対峙しなければならない、ということは、みなさんも認識してされていると思います。
では、どうやって対峙すれば良いか?
この時代のSocial Goodってどんなものか?
世の中的には、仕事のやり方からオフィスの在り方、人との会い方、食事の仕方、オフの過ごし方等々から社会の在り方、仕事や生活様式、消費に対する価値観まで当たり前のものが当たり前でなくなってしまいました。様々なものに対する見方が根本から変わり、企業に対しても「社会に必要だっけ?」といった見方すら生まれるかもしれません。よって今は「そのブランドが対峙する社会課題は何なのか?」をあらためて考えてみるべきかと思います。
その為には、まず社会の様々な領域における現状をきちんと認識し、日本が真に自立する為の各領域を超えた社会全体のグランドデザインを描く。その中で、企業(ブランド)の役割を見出していく、という大局的な視点が必要です。
元々、国の独立条件としては食の自立・経済の自立・エネルギーの自立などがあげられるのですが、カテゴリー別にコロナ禍の影響を見てみると
<その前からあった課題>
食の自給(日本は自給率約4割)と安全、長期の経済停滞、新エネルギーへの移行が停滞
<更に悪化した課題>
医療・福祉・教育での職場環境・待遇・人手不足
<大打撃を受けた業界>
外食、交通・航空、旅行・観光・ホテル、イベント・映画
<逆に需要が急増業界>
IT(テレワーク設備など)、デジタルコンテンツ、EC、物流
といった様々な状況があり、それぞれが色々と模索をしていたと思います。
例えば、ホテルをテレワークオフィスに、人を運ぶインフラを物を運ぶことに、店に来てもらうことをテイクアウトや出前に、リアルをオンラインに(この場合は、遠隔地からのイベント参加が可能になった、出向かなくても相談などさせてもらえる、不登校者が授業に参加しやすくなった、といったプラスの効果もあった)、など。
しかし、これまでのビジネスモデルの範囲内では、マイナス要素をとても補いきれないと思われるカテゴリーが多数あります。
よってカテゴリーを超えて、如何に補い合うか?という発想が必要になっており、例えば、職を失ったカテゴリーの企業や人たちが、人手不足のカテゴリーへシフトする、という位の視点をもって社会全体の最適化を考えたほうが良いと思います(元の所属カテゴリーでのノウハウ・スキルなどを、シフトしたカテゴリーで変換して活用できれば理想)。
このように、着眼大局で社会のグランドデザインを創造し(本来は国の仕事かと思いますが)、その環境でのブランドのコアコンピタンスを再考し、ブランドがどの社会課題に対峙していくべきかを考えます。
又、これは3C分析のCustomer(狭義の顧客だけでなく、広義の社会の範囲で)にあたりますが、下の図のように、どの課題にどのソリューション(企業価値)を提供することで、社会や生活者の心理・態度にどんな変化をもたらすのか?といった顧客価値への変換も必要です。

又、3C分析のCompanyにおいては、コロナ禍の影響により従来の認識や常識と異なり、これまでの強みが強みでなくなったり、あるいはこれまで脅威であったことが新たな機会になるケースがあります。その場合には、あらためてSWOT分析をすることが必要と思います。
それでもマイナス要素を補えない時は、そこを補える他のカテゴリーの企業とコラボレーションし、自社だけではできなかった価値創造に挑戦するというアプローチもあります。(3CのCompetitorをCollaborationとして考える)そして、その上で事業のポートフォリオを再設計してみます。
これら一連のプロセスにより、コロナ禍以降の社会におけるブランドの役割や価値の再構築の可能性が見出せるのではないでしょうか?

ただし着手は小局で良いと思います。というか、そのほうが良いかもしれません。
最初は小さな可能性であっても、中長期的あるいは持続的に成長できることなのか?という視点を大事にするべきだと思います。
これが「Social Good Branding」という言葉の意図するところです。
3.キーワード②「Brand × Digital」
デジタルで価値をどのように伝えるか?
「いくら素晴らしいものをつくったとしても、伝えなければ、ないのと同じ」
これはスティーブ・ジョブズの有名な言葉です。
以前から「サイトをリニューアルしたのにアクセスが増えない」「良い動画をつくったのに視聴者数が伸びない」といった話を聞きます。これはブランド価値でも同様。
更に、コロナ禍で顧客とのリアルな接点が断たれてしまいました。これは業種・業態にもよりますが、多くの企業にとって最も大きな打撃ではなかったでしょうか?
また事態が収束したとしても、オンラインがある程度リアルの代替えがきくことが分かってしまったので、生活者(顧客)の出勤や外出といった活動はリアルとデジタルのハイブリッドが定着していくと思われますので、企業もリアルとデジタルのハイブリッドな顧客接点をもっておくことが必要になります。
そしてこれからは単にデジタルを導入するのではなく、まずは前述した
対峙する社会課題を選定→ブランドのコアコンピタンスの再確認→事業ポートフォリオの再設計を実施した上で、これまでのマーケティングファネルのどこにデジタルを取り込むか?を考える必要があります。
そして、デジタル接点で何をすべきか?
企業やサービス・商品を理解してもらう為に、動画を制作?コミュニティで対話?ランディングページをつくり詳細説明?
顧客に起こしてもらいたい行動は、相談?来店促進?会員登録?お試し?購入?リピート?カスタマーサポート?

適切な解は業種・業態・企業によって異なります。少なくとも、これまでのように「自社サイトをつくりました。情報更新しました。以上。」「SNSで投稿しました。ファンからのコメントには返信していません。」という対応では、デジタル接点の使い方として失ったリアル接点分を補うには足りない気がします。
更にはその上で、デジタル接点で生まれた顧客の情報や顧客との関係性を自社独自の1st Partyデータとして構築し、活かすことが必要です。(注:デジタルマーケティングの超基本機能であり個人を特定していたクッキーはいずれ使えなくなる)
デジタルを使うからには、そこで生まれるデータを活かさなければ、その意義は半減します。
DX(デジタルトランスフォーメーション)が注目されていますが、デジタルを使うことが目的になってしまい、本質である伝えるべきブランド価値や使う目的が不明確なままのケースが多いように思います。これは、今に始まったことではなく、ネットやデジタル、SNS、様々なソリューションが普及するたびに起きている現象かと思います。
良いお手本としては、最近注目されている「D2C(Direct to Consumer)モデル」があります。
これはまだ海外事例が中心ですが、最初からデジタル主体でビジネスを設計しています。意外にも昔からある業態でも実現可能で、しかも素晴らしい実績をあげています。
既存のビジネスモデルに後からデジタルを取り込む場合と比べると、リアルとデジタルの比重や構成に差があるかもしれませんが、D2Cモデルを知った上で、自社ブランドではデジタルをどこで取り込み、どこまで活用できるかを考えたほうが良いでしょうね。
下記にD2Cの事例・世界観の出し方・ビジネスモデルをご紹介しますので、参考にしてみてください。



「Brand × Digital」とは、“ブランドの価値(厳密にはブランドが生み出す顧客価値)を、如何にデジタルで伝えるか?”という意味。
素晴らしい価値を構築しても、社会や顧客に伝わらなければ意味がありません。
4.コロナ禍以降の社会に適応する
Brand × Digitalの戦略再構築
最後に「Social Good Branding」「Brand × Digital」を実現するモデルをご紹介します。
これは昨年からWebセミナーやメルマガ&noteの連載をし、複数のコンサルサービス開発とそれらの連携を模索する中でつくった4つのプロセスを回していくものです。
- ・Social Good Branding(ブランド戦略)
に関しては、これまでも多数実施してきましたが、
- ・DX実現
- ・デジタル接点でのコミュニケーション強化
- ・自社データの構築・活用
はまだ事例が少なく、研修テーマや講演の為の実験などを実施したもので、これから実例を積み重ねる必要がありますが、これからのブランドが戦略をつくるだけでなく、マーケティングでデジタルを取り込み、デジタル接点でのコミュニケーション強化、自社データの構築・活用といったPDCAをモデル化し、マーケティングROIの最適化を図る上でも有効なものと考えています。
又、このプロセスは、①から始めるのがベストですが、企業の状況により、②から始めても③や④から始めても大丈夫です。最終的に4つのプロセスが回っていくようになれば良いと思います。
ぜひ、参考にしてみてください。

