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専門家寄稿記事 ブランドをどこに立てるか ~ブランド・テリトリー・プランニング~

市場を新たに規定する

「ブランド・テリトリー」とは、ブランドを市場のどこに立てるか、そのブランドを市場のどこで活動させるか、ということを意味しています。それは、市場をどのように新しく規定するかということでもあります。例えば、「アイスクリーム市場」ではなく、「家庭用高級デザート市場」のように、消費シーンや競合する商品カテゴリーを含む、より複雑な市場の決定がブランド・テリトリーなのです。ブランド・テリトリーは、新しいブランドを企画するとき、市場を分析した、その次の早い段階に決めなくてはいけない事項です。

構成要素

では、ブランド・テリトリーはどのように構成されているのでしょうか。新ブランドを立てるべき市場を決定するためには次の3つの視点を検討することが必要となります。それが1)商品カテゴリー視点、2)顧客視点、3)自社理念と資源視点、の3つです。

まず、1)商品カテゴリー視点です。商品カテゴリーは、それ自体がさまざまな要素からできています。例えば、食品や薬品のような基本的なカテゴリー分類があります。それ以外にも、温度帯(冷凍、冷蔵など)、形態(液体、固形)、パッケージ(瓶、紙パックなど)、販路(業務用、消費者用など)、などのさまざまな分類が存在しています。
これらの複雑な商品カテゴリーの中でどこを選択するかのひとつの重要な基準は、競争の質です。競争の質とは、競争の厳しさの程度、競争の変化の激しさ、また、競争があったとしても、競合企業同士の関係がフレンドリーか、敵対的か、などです。

「レッドオーシャン」(競争が厳しい血で血を洗う市場)、「ブルーオーシャン」(競争がなく利益を独り占めできる市場)という考え方は浸透しているものの、誤解されがちなことは、「よく探せば、どこかに楽して儲かる市場があるだろう」という考えがちなことです。『ブルーオーシャン戦略』の著者たち、INSEADのキム教授とモボルニュ教授によれば、「市場の見えざる需要を掘り起こす」のがブルーオーシャン戦略です。つまりブランド・テリトリーを決定するためには、その市場を再定義して、市場のニーズを掘り起こせるかどうかがひとつのカギなのです。

二番目の視点は、2)顧客視点です。これは消費(使用)シーン、消費者タイプ、消費価値、ライフスタイルなどを含む概念です。例えば、「チャーハンの素」という商品カテゴリーを考えるとき、中華料理や加工調味料、という既存の商品カテゴリーだけで考えることは限界があります。夏休み中に家族が家庭にいるときの昼食シーンと言った顧客視点を入れてブランド・テリトリーを考えることが必要となります。

三番目の視点が、3)自社理念と資源です。自社は何をなすべき存在と考えているのでしょうか。あるいは、どのような価値が重要と考えて企業を運営しているのでしょうか。その企業の「思い」を取り出すことはブランド・テリトリーを考えるうえで重要です。
例えば、無印良品(良品計画)は、地球大、無名性、シンプル、自然という4つのキーワードをテーマとしており、こうした理念が自ずから同社のブランド・テリトリーとなっているのです。

また、自社がどのような技術、人材、資力などの企業資源をもっているのか、これらを合わせて考える必要があります。1980-90年代には、かつて多くの日本企業がIT産業化を目指してコンピューターや関連産業に進出しようとしました。しかしその多くが撤退を余儀なくされています。
例えば、花王は1986年にフロッピーディスクを生産発売しましたが、1998年にその事業から撤退しています。これは直接的には当時CD-ROMが台頭してきたためでしたが、自社が継続的・持続的に活用できる企業資源とは何かを検討したうえで、ブランド・テリトリーを決定する必要があります。

なぜテリトリーか

なぜブランド・テリトリーをあらかじめ考えることが必要なのでしょうか。
新ブランドをプランニングするに当たって、どのような市場やカテゴリーにどのように立てることをまず決めて、これを所与のものとして考えなければ、新ブランドのあり方が曖昧になってしまいます。あらかじめ決めたブランド・テリトリーから逸脱したアイデアやコンセプトは原則、排除されなければなりませんし、むしろブランドの発想の範囲を制限することで、より独創的なアイデアが期待できるということもあります。

カルビーの「フルグラ」は近年のマーケティング戦略の成功で大きく売上を伸ばしました。フルグラのブランド・テリトリー(そのような用語を同社は用いていませんが)は、「朝食」です。朝食市場とは、シリアル、パン、コメなど異なった食品を含む複合的なカテゴリーであると同時に、消費シーンという顧客視点が入っています。同社の企業理念である「私たちは、自然の恵みを大切に活かし、おいしさと楽しさを創造して、人々の健やかなくらしに貢献します」にも合致しています。さらに、同社にはこの分野で持続的に戦っていける企業資源がありました。
ブランド・テリトリーを考案するためには、何をベースとして発想の原点とするか、また、ブランド展開のために何をカギとして用いるかを考えなければなりません。

著者プロフィール

田中 洋 Hiroshi Tanaka 中央大学大学院
戦略経営研究科教授
日本マーケティング学会副会長

京都大学博士(経済学)
(株)電通 マーケティング・ディレクター、法政大学経営学部教授、
コロンビア大学大学院ビジネススクール客員研究員などを経て2008年4月より現職。
消費者行動論・マーケティング戦略論・ブランド戦略論・広告論に精通し、 多くの企業でマーケティングやブランドに関する戦略アドバイザー・研修講師を勤める。
その著作・研究活動により、日本広告学会賞を三度、中央大学学術研究奨励賞、 また東京広告協会白川忍賞特別功労賞を受賞している。
http://hiroshi-tanaka.net/

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