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専門家寄稿記事 イノベーションからブランドを創造する

ブランドが産まれる過程

ブランドの重要な研究課題のひとつは、そもそもなぜブランドは産まれるのか、という問題である。企業が勝手にブランド名を付けた商品が発売されているから、というのはひとつの答えではあるものの、十分な答えではない。確かに企業は自社の商品やサービスに番号なりネーミングを施して、顧客に発売している。

しかしこうした数多い商品がすべて「ブランド」になるわけではなく、ブランドとして通用している商品は実際にはごくわずかである。その名前を聞いても、どのような商品か思い出さない商品のほうがむしろ多いのである。

論者が唱えるブランドの定義のひとつに、名前を知られたブランドのみがブランドである、という定義がある。この定義自体、問題はあるものの、ブランドのある本質を言い当てていることは確かである。その名前が認知されていなければ、ブランドはブランドとしての効果を発揮することはできないだろう。

それでは、我々がその名前を知っている著名ブランドはどのようにして著名ブランドとなり得たのだろうか。この問いに対する私の答えのひとつは、そのブランドがもともとイノベーションを起こしたからである、というものである。もちろんイノベーションを起こした商品がすべてブランドになるわけではないし、イノベーションを起こさなかったがブランドになったブランドも存在する。

たとえば、「三菱」のように明治期に政府と関係をもつことによってできたブランドも存在する。私がここで言いたいことは、一般の消費財のようなブランドがブランドとして生成するためには、イノベーションが大きく寄与しているということである。

イノベーションとは

それではここでいうイノベーションとはどのようなことだろうか。イノベーションの定義もあまた存在するものの、私の考えでは、顧客のレベルで見られたイノベーションとは、次の二つの要件を満たすものを指す。ひとつは、「生活のパターンを変化させる」こと、もうひとつは、「生活における優先度を変化させる」ことであることだ。

たとえば、iPhoneのようなスマートフォンはひとつのイノベーションであるが、スマホが導入されることによって私たちの生活のパターンは一部ではあれ変化した。空き時間があれば、スマホを開くような習慣がそれである。

また、生活者はスマホについて、他の活動よりもスマホを優先して扱うようになった。このようにイノベーションが起こる過程では、我々の生活における規則性が変化し、イノベーションを起こした製品の使用が優先されるようになる。こうした事象は、テレビ、コピー機、パソコン、など現代生活の歴史のあちこちでみることができる。

そしてこのようにイノベーションが生活シーンの中で起きると、そこに同時にブランドが成立することが多い。たとえば、マクドナルドの場合、マクドナルド兄弟が発明したハンバーガーを低コストで清潔においしく作り提供するシステムがイノベーションであり、実際に我々のファストフードを食べる生活をつくりだし、その結果、マクドナルドはブランドとなって定着した。

イノベーションが起こるとそこにブランドが成立しやすくなる理由は、生活パターンが変化したとき、消費者はそのポジティブな変化をもたらした原因を、商品のブランドに求めるからである。しかしながら、イノベーションだけでブランドが簡単に生まれるわけではない。その後のプロセスが重要である。

ブランドがブランドになるとき

イノベーションが起こった後、その製品やサービスがブランドに転化する。そのプロセスにおいて、次の二つの事態が重要である。

第一の事態とは、イノベーションそれ自体が一般化し、日常生活の一部となるときである。当初新しさによってもてはやされていた商品やサービスであっても、時間が経てば生活の一部に取り込まれて、消費者は特に新しさやメリットを感じなくなる。そのとき、ブランドはイノベーションが起したこと自体が忘れられるようになる。ブランドが成立するのは、実はこのようなときである。そのブランドがイノベーションを生活にもたらした主役であった事実は忘れられ、そのブランドが世間によく知られ有名であるという事実だけが残るのである。

第二の事態とは、イノベーションを起こしたブランドに、その後のさまざまなコミュニケーション活動の結果として、新たな意味やイメージが付け加えられたときである。広告などのコミュニケーション手段はこうしたブランドに新たな意味を加えるために大きな役割を果たす。
たとえばスターバックスは、1980年代にシアトル系コーヒーショップという業態を新たに興し、コーヒーの飲用習慣にイノベーションを起こした存在である。しかし、こうした事実は今日の消費者には忘れられているし、記憶されているとしても重要ではない。

1987年にシアトルで事業をスタートさせた当時のスターバックス店舗は、インテリアや店舗スタイル、ロゴにおいて今日のそれらとは異なっている。今日、われわれが思い描くスターバックスブランドとは、この30年間の間に形成されてきたものなのである。
つまりブランドが成立するのは、イノベーションが起きてからのことであるが、実際にブランドが消費者の心理の中に形成されるのは、イノベーションがあったことが忘却され、あらたな意味やイメージがそこに付け加えられた後からなのである。

実務的インプリケーション

それでは我々がブランドを形成しようと意思したとき、どのような考え方が有用なのだろうか。

まず、第一に提供する商品やサービスによって、顧客にイノベーションを経験させることである。ここでいうイノベーションとは、単に安いとか便利というのではなく、それを採用することによって、生活のパターンが変化するような出来事のことである。UberやAirbnbなどのオンラインやアプリを用いたサービスはこのような例である。そして、イノベーションを起こしたのは、そのブランドであることを顧客に認識させる必要がある。

第二に、イノベーションが起きたら、できるだけその普及を一般化させ、市場浸透を加速化させることである。そのことによって、ブランドがイノベーションとは離れて、ブランドとして自立することが期待できるからである。たとえば、マクドナルドは1955年にレイ・クロックによる第一号店をオープンして以来、約20年間で欧州・日本・オーストラリアなど全世界に浸透させた。

第三に、そのブランドに独自の視覚イメージや連想を体系的に加え、また、ポジショニング=顧客にとっての意味を確立させることである。この場合、そのブランドが、もともとのイノベーションと異なった意味をもつ場合もある。ソニーやグーグルのように、その後のブランドの発展によって、ブランドが異なった意味をもつようになることはいくらもあるからだ。
つまり我々はブランドを構築しようと思えば、イノベーションからブランドの意味に至る過程をマネジメントする必要があるということになる。

著者プロフィール

田中 洋 Hiroshi Tanaka 中央大学大学院
戦略経営研究科教授
日本マーケティング学会副会長

京都大学博士(経済学)
(株)電通 マーケティング・ディレクター、法政大学経営学部教授、
コロンビア大学大学院ビジネススクール客員研究員などを経て2008年4月より現職。
消費者行動論・マーケティング戦略論・ブランド戦略論・広告論に精通し、 多くの企業でマーケティングやブランドに関する戦略アドバイザー・研修講師を勤める。
その著作・研究活動により、日本広告学会賞を三度、中央大学学術研究奨励賞、 また東京広告協会白川忍賞特別功労賞を受賞している。
http://hiroshi-tanaka.net/

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