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専門家寄稿記事 ブランドをつくる組織とは

企業の中でブランドづくりに本格的に乗り出すというとき、その組織体制はどのように考えたらよいでしょうか。ブランドを管理する組織として、以下の6つの種類の社内組織が考えられます。
1)専門組織担当制:CBO(chief brand officer、ブランド管掌役員)を設置して、ブランド管理専門の組織を立ち上げる。
2)既存部門担当制:特定の既存部門がブランド管理を担当する。例えば、宣伝部門をブランド担当の組織として、名称をブランド戦略部と変更するような場合がある。
3)委員会担当制:ブランド担当者を指名して、ひとり、あるいはクロスファンクショナルな組織横断委員会で管理を行う。
4)役員担当制:特にあらたに組織や担当を設けず、CEOあるいは上位役員がブランド管理担当を担う。
5)部課長担当制:ブランドエクスペリエンスマネージャーなどブランド専門の担当者をあらたに任命する。管理専門組織を作る場合も、作らない場合もある。
6)外部組織担当制:外部の第三者にアドバイザーの形でブランド管理の一部をゆだねる。第三者がデザインやビジネスコンサルなど、ある種の専門家であることが多い。無印良品が取っている体制はこれである。
これらのあり方をどのように選択すべきでしょうか。
これは、その組織が、まず、どの程度ブランド管理を重視し、次に、企業の資源をどの程度使おうと意思するかによります。
もしもその企業がブランドを重視して、本格的に管理を行いたいと望めば、1)のあり方を選択することが考えられます。また、あまり資源を使わずに、ブランド管理しようと考えたならば、3)4)5)のあり方も望ましいでしょう。6)の社外のエクスパートにブランド管理をゆだねる手法は、おそらくなかなか真似できないものと言えます。
ここで大事なことはどの形をとるにせよ、次の①権限移譲の問題と、②権限の切り分け問題を考えないといけないでしょう。
まず、①権限移譲があります。これはブランド管理部署がもつ、権限の範囲が、どこからどこまでであることを明確にすることでもあります。その担当者が何を行う権限をもっているか、何を自分で決済することができるか、社内に対してどのような権限で意見を言うか、をあらかじめ明確にする必要があります。もしこの権限が明確になっていない場合、CBOと社内の他の部署との摩擦が避けられません。例えば、CBOが、ある商品ブランドに企業ブランドを使うことは許さない、と判断したとしても、現場では「なぜ売れるために有利なのに、この商品に企業ブランドを使ってはいけないのか」という反発を呼ぶことが容易に想像できるからです。
次に、②権限の切り分けという問題があります。切り分けとは、ブランドのどのレベル(経営・マーケティング・コミュニケーション・知財)の問題をブランド担当者にゆだねるか。ブランドをどこの市場に投入するか、企業全体のブランドポートフォリオをどうするか、というような経営レベルの問題か、ブランド育成のためにコンタクトポイントをどうするか、というマーケティングの問題か、あるいは、広告やプロモーションなどのコミュニケーションの問題か、さらに、ブランドのマークやロゴなどの知財、あるいは、デザインの問題を扱うのか、どのレベルを担当者にどこまで任せるかを意思決定しなければなりません。
注意を要する問題とは、既存部署にブランド管理を任せる場合です。この場合、やはりどのくらい強い権限をどの幅で、どの部署にもたせるかが問題となります。例えば、宣伝部をブランド戦略担当としたときは、コミュニケーションに関することは任せられても、マーケティングに関する権限を行使できるかどうかはわかりません。宣伝部が広告をブランドへの投資と考えたとしても、企業によってはコストセンターあるいは非本来業務と考えて軽視する場合があるからです。仮に権限を「公式」に与えたとしても、実際にその権限が現場で影響力を持ちうるかどうかはわかりません。現場レベルでの抵抗が予測されるからです。特に、既存組織にブランドの権限を付与する場合は、CEOの「後ろ盾」や実際に権限を行使する場合の手順などを検討すべきです。ブランド組織の問題は、今日、フラットな組織論や、ティール組織のようなより自由度の高い組織において、どのように位置づけられるかを慎重に検討すべきことが求められます。
*本コラムは田中洋著『ブランド戦略論』(2017, 有斐閣)をベースとしています。
