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専門家寄稿記事 デジタル時代のブランド戦略 その1

デジタル時代にブランドはどう変化するのでしょうか。これは多くのマーケターにとって大きな関心ごとであると思います。
ただこの問題はそれ自体が大きすぎて、どのような答え方をしても的外れになってしまう危険性を含んでいます。
といいますのは、この問いかけの中に複数の異なった問いが含まれているからです。例えば、デジタル時代に、オンライン上のブランドをどうやって育成するか、あるいは、デジタルの手法を使ってどのように新ブランドを育成するか、など、デジタル時代のブランドという言い方の中にはさまざまな問題が含まれています。

そもそもデジタル時代のマーケティングとはどのようなものなのでしょうか。あらためて、これまで言われてきたデジタルマーケティングのポジティブな特徴について考えてみましょう。

1.相互作用:売り手と買い手の関係性において、買い手は受け身な立場だけでなく、自ら能動的に情報を探索して、買いたいものを選択する。また売り手は買い手の反応に基づいて、次のメッセージやアクションを起こすことができる。

2.データ・リッチ:顧客の反応について、データで確認することができる。またビッグデータ化し、他のデータセットと組み合わせることで、レガシーメディアではできなかった分析が可能になる。

3.低コスト:マーケターにとって、顧客を細かくセグメンテーションすることで、最低限のグループにコンタクトし、また、予算の限度と相談しながらマーケティングを実施できる。費用だけでなく、実施の手間や時間の節約というコスト面でも低減化が期待できる。

4.顧客フォーカス:リーチしたい顧客に、より的をしぼってメッセージを届けることができる。また、より顧客が好む、あるいは頻繁に使っているウェブサイト上やSNS上でコミュニケーションができるために、顧客を満足させることができる。

5.幅広いマーケター:コストや絞り込んだ顧客層への訴求という特徴から、レガシーメディアではできなかった広告活動が可能になり、中小企業やBtoB企業をはじめとした企業群がマーケティング活動に取り組むことが実現できる。

もちろん、デジタルマーケティングの特徴すべてがレガシーなマーケティングに優越しているわけではありません。ネガティブな面も以下に挙げてみます。

1.リーチ力:幅広く顧客にリーチして知名度を上げるようなマーケティング活動において、テレビが優越している面がある。

2.流通との連動:従来のテレビ広告キャンペーンは、大規模流通店頭での商品配置や販促活動と連動していたが、デジタル広告の場合はまだ流通からテレビほどの十分な認知を得ていない。

3.ブランド・イメージ構築:情緒的なブランド・イメージをつくる広告活動において、オンライン広告はテレビの訴求力には十分至っていない。(近年のオンライン動画広告やSNSはこうした課題を克服するために実施されている側面がある)

4.手法の複雑さ:デジタル広告だけとってみてもそこには多くの手法があり、実際に計画し実施するときはこれらの多くの手法の中から選択して組み合わせる必要がある。また、種々の広告・広報・プロモーション手法などを組み合わせる必要もある。

5.効果測定の困難さ:デジタル広告においては、どのような顧客にどのようにメッセージがリーチしたかを明確に測定することができる。ただし、eコマースを除けば、そのデジタル広告視聴の結果、実際どの程度の人が後から購入したかまでを突き止めることは困難である。しかし、デジタル広告によって、リード(購買への手がかり)を得たり、資料請求のような顧客がどのような反応行動があったかについてのデータを得ることができる。

拙著『ブランド戦略論』(2017)では、ブランドを構築するためには、1)経営戦略、2)マーケティング戦略、3)コミュニケーション戦略の3つの層から考える必要がある旨を述べました。デジタル時代のブランド戦略にとっても同じことが言えます。
つまり、デジタルの力でブランドを構築するときは、最初に構想やイノベーションがあり、そこに経営・マーケティング・コミュニケーションの戦略を立てていく必要があると考えられます。

ただし、デジタル時代には次のポイントを考慮に入れてブランド戦略を立てていく必要があります。

経営・マーケティング・コミュニケーションの3つの層が、より近くなり、オーバーラップし、また、ほぼ同時に意思決定する必要が出てくる。

顧客にとって、オンライン上のブランドは「経験財」であることが多いために、オンライン上での経験が重要である一方、リアルなブランドと比較して、ブランド・エクイティが急速に縮減する可能性が高い。

技術や革新の進展スピードが速いために、ブランドのスクラップアンドビルトを考えるブランド・アーキテクチャーの設計が企業にとってより重要となる。

次回の連載で、上記のポイントをより詳しく解説していくことにします。

著者プロフィール

田中 洋 Hiroshi Tanaka 中央大学大学院
戦略経営研究科教授
日本マーケティング学会副会長

京都大学博士(経済学)
(株)電通 マーケティング・ディレクター、法政大学経営学部教授、
コロンビア大学大学院ビジネススクール客員研究員などを経て2008年4月より現職。
消費者行動論・マーケティング戦略論・ブランド戦略論・広告論に精通し、 多くの企業でマーケティングやブランドに関する戦略アドバイザー・研修講師を勤める。
その著作・研究活動により、日本広告学会賞を三度、中央大学学術研究奨励賞、 また東京広告協会白川忍賞特別功労賞を受賞している。
http://hiroshi-tanaka.net/

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