知識を深める
専門家寄稿記事 コロナ禍でのパーソナル・ブランディング

コロナが本当に終息するかはわかりませんが、この1年ほどの生活環境の変化は、コロナが終わった後も続くでしょう。
例えば「働き方」「キャリア意識」は大きく変わり、それらは残るものも多い。
ブランド・マネージャー認定協会の講座を受講するような方々はもともと意識の高い人が多いですが、あらためて、いまは個人の「自律(主体的なキャリア形成=パーソナル・ブランド構築)」と「自立(経済的に食っていけること)」が大事なテーマだと思います。
おそらく仕事に限らず「Life(生活・人生・生命)」のレベルでそれを考えることかと思います。
こういうテーマは僕たちのような個人事業主やフリーランスはしょっちゅう考えています。やや、情けない感じすらしますが、それくらい個人事業主やフリーランスというのは自分のLifeを考え続け、自分を確認し続けないと不安だからです。でもこれは自分のフロンティアを拡げてゆくことでもあります。
一か所に留まらない。留まっていたら、それはそのまま停滞を意味し、停滞は衰退を意味します。
大きな会社も新たな動きを始めています。
この原稿を書いている1月26日の時点では、電通さんのニュースが目につきます。本社ビルの売却検討、中高年の一部社員230人を業務委託契約に切り替えるなど、環境変化に合わせた動きが見られます。
後者はニューホライズンコレクティブという名の100%子会社を設立し、230人と業務委託契約を結ぶ。これを通じて、電通さんの仕事を請け負うほか、各自が自分で仕事を取っても良いという仕組みです。
ちょっと前なら「体(てい)の良いリストラ」に見えるかもしれませんが、いまなら「積極的な独立支援」となるのではないか。
恵まれていると思います。
会社はいつか辞める時が来るし、「それ以降はどうするのか」は常に付きまといます。普通、副業を認めるくらいはあっても「独立後の仕事の面倒まで見る」などということはなく、独立を考えている人たちには羨ましい限りでしょう。
栄枯盛衰。コロナで戦場の高地と低地が大きく変わりました。
それまで高地にいた企業やブランドがあっという間に低地に行くことになった。
逆に一夜にして高地に行った企業やブランドもあります。まるで「動く地形」のうえにいるようです。この激しい変化の時代を「平時」に対して「有事」と言いますね。そして有事の時は、やはり歴史から学ぶといい。
何も難しい歴史の本を読む必要はないのです(もちろん読んでもいい)。いまはYouTubeや動画配信サービスなどで歴史の情報も溢れているから、それらを試してみるのが便利です。
僕もNHKオンデマンドに入会しました。「NHKスペシャル」のクオリティの高さ、素晴らしさは言うに及ばず、「歴史秘話ヒストリア」など人物史をテーマにした番組は「有事でのパーソナル・ブランディング」を学ぶケーススタディの宝庫です。同時に「有事の知恵」も学べそうです。
テーマは古代から現代まで、地域は全世界、起こる問題は様々。乱世、幕末・明治維新のような時代に人々はどうしたか。3・11の福島で現場の人々はどう考え行動したか。

オンデマンド(見たい時に見たいものを見られる)ならではの面白い見方もしています。
例えば「龍馬伝」。
これは坂本龍馬の視点で描かれた幕末・明治維新までの話ですが、オンデマンドならではなのはここからで、同時並行して「西郷どん」も見ます。こちらは西郷隆盛の視点からの同じ時代の話。
こうしてクロスしながら見ると同じ時代でもそれぞれの主人公の視点、作家のイマジネーションや解釈の違いを見ることができるのです。その捉え方の違いを見るのが面白い。目の前にあるパラレルワールドというか「世界観は人それぞれ」を感じることができます。
ここに作家のイマジネーションや戦略性を見ることができます。これも大いに学びになります。
歴史モノに限らず、映画も以前より見るようになりました。
これもAmazon PrimeやNetflixで簡単に見られます。印象に残っている作品がいくつかあります。『感染列島(主演:妻夫木聡、檀れい/2009年)』はその一つです。主人公は新型ウイルスと戦う医者。そこで見られる医療現場の崩壊と感染の拡大はとてもリアルで、10年以上前の映画ですが、ここにはこの1年で起きた世界の状況が描かれていました。
『Fukushima 50(主演:佐藤浩市、共演:渡辺謙/2020年)』も印象深かったですね。
主人公は福島第一原発所長と1・2号機の当直長。2011年3月11日午後2時46分。津波によって制御不能になった福島第一原発の暴走を、現場で働く従業員が命がけで止める姿が描かれています。
コロナの医療現場のように、いつの時代も現場の人たちは命がけで働いていると痛感させられます。最後に主人公が「俺たちは自然をなめていた。コントロールできると考えていた」と言葉を残します。
これも今の状況に、何かメッセージをくれているように感じます。
歴史を下敷きに今の時代を眺めるといろいろな気づきがあります。
そして「歴史は繰り返す」の言葉を尊重して「この先の行く末」や「今後、どうしたらよいか・どうするべきか」の仮説が生まれます。
コロナは合併症的に色々な社会問題を明るみに出し、僕たちに対応を迫っています。
例えば「高齢化・人口減少」はどんなことをあなた自身に及ぼすか。
「グローバル経済の終焉」は今後、あなたのビジネスを何に向かわせるか。
「デジタル社会への本格的移行」はマーケティングをどう変えるか。
「グリーン・リカバリーへの取り組み」によってあなたの経営の仕組みや意思決定の優先順位をどう変えるか。
そして「働く人の価値観の変化」はBtoBを主体とするコンサルタントやフリーランスに何を求めるか。
これは人の数だけ答えがあると思います。まるで「幕末・明治維新」というテーマで作家の数だけ解釈やストーリー展開(戦略)があるのと同じです。僕たちは自分の頭で考える時代を生きているのです。
あらためて歴史を学ぶことをお勧めします。いま直面している問題を解決するヒントを垣間見ることも多いものです。
文学、人文学は「平時」にはあまり評価されなかったと思います。大学生が典型で、事実、うちの子供(文学部)も「自分は何のためにこんな学部に入ってしまったのか」と悩んでいます。
政治や経済といった「実学」のほうが社会で役に立つと思っているのです。
しかし、実学は「これからも世の中の仕組みやルールは変わらない」という「平時」を前提とした性格が強い。いまのような有事で世の中が大きく変わり、これまで有用だった実学があまり役に立たなくなると、今後、人文学のほうが問題解決や戦略性のトレーニングとして有用だと思います。
最後に、先の見えない時代ではあるけれど、こういう時のほうが鍛えられると思っています。
僕たちの人生はまるで「ぶどうの木」のようです。
ぶどうは肥沃な土地には根付きません。水分の少ない枯れた土地、石灰質の多い土地、つまり厳しい土壌に根を張ります。厳しい土地だからこそ、必死になって水を求めて根を伸ばすわけです。
いまの時代もまさにそうではないでしょうか。そこで歴史に学び、いろいろと考え、試行錯誤してみる。または新たな武器を手に入れるよう、スキルアップを志向する。
そんなこともコロナ禍のなかで、仕事や時間に融通が利く時ならしっかり取り組めます。そして気づいた時には土の中にしっかりと根を張り、ちょっとのことでは倒れない木に成長しているのです。
健闘を祈ります。
