知識を深める
専門家寄稿記事 ブランドはABC

【 環境 】
コロナ時代のブランドについて考えてみましょう。
まず、私たちを取り巻く環境はどうなっているのか。3つあります。
第1に、本物しか買ってもらえない。
コロナでステイホーム中に家の中が気になって断捨離しちゃった、という話をよく耳にします。
友人によると、お役所のゴミ処理施設が車でごった返して予想外に作業に時間かかった、とのこと。
「ぼくはあれだけがんばって、結局ゴミを買ってたのか、と愕然としました(笑)」だから「これからは、本当に欲しいもの、本物しか買わないことにします」と35歳、まだ若い彼のこの言葉は、示唆に富んでいます。
いま、買おうとすれば、ネットでほぼなんでも揃います。
しかし、それって、ゴミを増やすだけかもしれない。本物だけが欲しい。
では、その本物とは? 後に詳しくお話しします。
第2に、選ばれる理由が必要。
少子高齢化、現時点でも、4人に1人は65歳以上です。そしてますます加速します。これを経済の視点から見ると、「財布の数と中身がこれからどんどん減っていく」。
そうなると、経営指標を「対前年比**%アップ!」とするのは論理的に成立しないわけです。
量より質、中身を充実させなければならない。「売る」のではなく「選ばれる」。
第3に、新しい価値観に共感して買う。
コロナで価値観が180度転換してしまいました。
「経済最優先を見直せ」東日本大震災以降、同じ意味のメッセージは繰り返し届けられてきました。
しかし現実は経済最優先で、地球を削ったり汚したりしても構わない。どうにかなるだろう。どうにもならないことを私たちは知っているのに。
原発汚染水を海に流す、流さないという話は、環境問題を 「 後回しにした」結果です。経済最優先ではもう、地球がもたない。
古代ローマが滅びた大きな原因は、森林伐採でした。木材の消費量が生産を上回ったのです。当時の「消費」は貴族たちで限定されていました。しかし今やグローバリゼーションによって人類全員が「もっと経済的に豊かになりたい!」と願っています。
これではとうてい地球はもちません。経済優先ではない、新しい価値観の提案が求められます。
【 ブランドはABC 】
以上の環境をふまえ、では、これからのブランドがどうあるべきなのか、どうあれば、お客様から愛されるのか。ABCにまとめました。

順に解説しましょう。
A Aesthetics 美学があること
何を「美しい」と見ているのか。
どんな「美しさ」を生み出したいのか。これが美学です。
人はブランドの「美学」に惹かれます。
■有限会社ロッキーマリン(神奈川県足柄下郡真鶴町岩455)では、フィッシングボート、エンジンなどを販売しています。
代表取締役の島田絵梨さんは「海遊びの楽しさ」をインスタグラムで発信しています 。
(https://www.instagram.com/ellirocky/)
ただボートやグッズを販売しているのではない、海で遊ぶことがどれだけ楽しいか、気持ちいいか。海の素晴らしさを伝えたい。
そこで島田さんはある満月の夜、ボートの上にピアノを置いて、ドビュッシー『月の光』を弾き、実況中継しました。私はリアルタイムで視聴したのですが、波の音、風の音、満月の光、そしてドビュッシー・・・なんとも幻想的な世界に、魅せられました。
ロッキーマリンはボートなどの「物体」を販売しているのではないのです。
「海遊びの楽しさ」ひいては「海の美しさ」を共感してもらおうと発信しているのです。
https://www.youtube.com/watch?v=45TVVDt5cKU
■ネコリパブリック
「2022年2月22日(ねこニャンニャンニャンの日)までに行政による猫の殺処分をゼロにする」ビジョンのもと活動しているネコリパブリック(通称「ネコリパ」)。
マスクしなければ外出できない。でも暑い。つけてても涼しいマスクが欲しい・・・そこで「ゆるネコさらさらマスク」を開発・販売しました。
スポーツウェアなどにも使われているクール素材なので、蒸れる不快感がありません。また、ネコリパ発祥の地岐阜縫製工場の熟練の職人による一枚一枚手作業のため、品質は確か。
ネコリパの美学は「ハッピーネコサイクル」とネーミングされています。
「本物(機能が優れている)」「猫助けになるという物語がある」「みんなが喜ぶ小顔効果美人マスク」「岐阜の主要産業でコロナの影響を受けている小規模縫製工場を助ける」
環境でお話しした3つの条件「本物」、「選ばれる理由」、そして「猫を助け、小規模地元工場を助け、自分自身も美人になる」という「新しい価値観」が満たされるわけです。
B Bond 絆を結び、耕す
ブランドは、感情的記憶で生まれます。
ケンタッキー・フライド・チキンのテレビコマーシャルはここ20年、クリスマスシーズンになると竹内まりやさんのおなじみの曲を流します。あの曲を耳にすると、これまでのクリスマスを思い出します。
子どもがまだ小さかったころ、一緒に食べたなあ・・・という。この感情的記憶が、「ケンタッキー・フライド・チキン」というブランドを脳内に形成するのです。つまり、ブランドとは「関係性」であり、「ここにしかない物語」が紡ぎ出すタペストリーのようなものです。
人は、ケンタッキーを買うとき、もちろん、フライドチキンという製品を求めていますが、実のところ、「誰とどこでいつ食べるか」という絆を買っているのです。
ブランドは製品・サービスの「中」には生まれない。「関係」つまり「絆」を結び、耕す「中」に生まれます。
お客様を、「商品を売る人」と定義するのではなく、「絆を結び、耕す人」としましょう。顧客コミュニケーション方法をイチから見直してみてください。
メルマガやYou Tube発信「だけ」のような、一方向コミュニケーションではなく、そこに必ず「対話できる仕組み」を入れるのです。
C Culture 独特のカルチャーがあること
Netflixは出張旅費や交際費、休暇取得の規程がありません。
必要と思えばビジネスクラスに乗ってもいいし、接待のため三ツ星レストランで食事してもいい。上司の事前承認は不要です。
しかし、Netflix研究を進めていくにつれ大事なことは、社内規定が「ない」ことではなく、「全て自分で決める自由と責任の企業文化」だということがわかります。「上が認めてくれない」という「言い訳」で育つのと、「これだけ費用かけたんだから、成果を出して回収しよう」というビジネスマインドで育つのと、どっちが組織の成長を加速するでしょうか。言うまでもなく後者ですよね?
社員が現場で判断する際、いちいち上司に聞くのではなく、「うちの文化なら、どんな答えになるだろう?」と自問して決める。トラブルの解決をするのは、ルールではなく文化。
本物しか買ってくれない、買う理由が必要、新しい価値観に共感して買う。このような世界では、「買う」というより「投票」といったほうが良いです。ブランドへの投票活動です。であるなら、無味乾燥な、いい子ぶりっこな秀才より、個性的で破天荒だけど、愛される人のほうが確実に得票します。
コロナ時代のブランド形成にはABC。ぜひ一度、あなたのブランドをABCで見直してみてください。
