本書を選択した理由は?
ブランド・マネジメントの教科書
今回紹介する本は、ケビン・レーン・ケラー先生の著書『エッセンシャル戦略的ブランド・マネジメント』(第4版・日本語訳)です。
この本は、原本となる『戦略的ブランド・マネジメント』を簡約化した1冊です。原本を一言で言うと「ブランドについてのテキストブック」、つまり教科書ですね。この原本がはたした貢献は、ブランド・マネジメントを大学やビジネススクールで教えられる体系にした、ということ。この本が誕生したことによって、様々な大学や大学院でブランド論の講座ができるようになり、そこに非常に大きな意味があると思います。たとえば、マーケティングではフィリップ・コトラー先生という著名な学者がいますが、彼がなぜ有名かというと、マーケティングをテキストにしたから。同じように、この本が誕生したことで「ブランド論」というものが世の中で勉強の科目として成立するようになりました。
著者のケラー先生は、第1回目で紹介したデービッド・アーカー先生と非常に似ています。やはりマーケティングや消費者行動、広告論などを研究しており、ケラー先生も実に多くの研究論文を出している非常に優秀な研究者です。彼は今、授業料が高額で優秀な学生の行く米国東部の私立大学「アイビーリーグ」の一つ、ダートマス大学のタックビジネススクールの教授職に就いています。アーカー先生のご友人でもあり、以前にお会いしたときはアーカー先生について「He is very California」、つまりカリフォルニア的な明るいスカッとした性格だと評していました。そのような話をするぐらい、アーカー先生とは近しい間柄なんですね。