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協会本部コンサルタントの武川が経産省関東経済産業局「知財経営定着伴走支援事業」の知財経営専門家として環境負荷軽減製品のブランディング支援を実施

東京都/株式会社田中電気研究所(経産省関東経産局・標準化)



 協会本部コンサルタントである武川が、経産省関東経済産業局の当事業「知財経営専門家」として、東京都世田谷区経堂にある株式会社田中電気研究所が研究開発した「ダスト濃度計」のブランディング支援を実施。

 昨今、社会的な動向として環境問題への配慮に関する意識は高まりつつも、国内ではまだ義務化されていない「ダスト濃度計」の設置。CSRの側面から自主的に設置する企業も増えつつある傾向だが、直接的利益を生みだす生産設備と違い、企業は極力費用を掛けたくないのが本音。そのため、イニシャルコストの低い海外製を体裁的に設置する企業も多いものの、他方、その性能の安定性が低く運営管理は徹底されていない。特に設置後のメンテナンスではデメリット面も多く、消耗品の交換に於いては汎用品が使えず、メーカー指定品を使うため、結果ランニングコスト高くつくこととなる。良く聞くメーカー主導のビジネスモデルだ。また故障が発生した際、すぐに直せないケースも多くみられ、場合によっては海外で修理をするケースもある。その結果、一定期間はダストの垂れ流しが続くこととなり、近隣住民が脅威にさらされることとなる。

 このような現場で起きる不便さを解決し、製品不備や近隣住民の不安を解消するために、㈱田中電気研究所の3代目社長となる田中敏文氏は動いた。製販を一気通貫で営む田中電気研究所では、国内自社工場を使い、高精度で安定的に定量データが取得できる「ダスト濃度計」を開発。その製品を、関東経産局の標準化支援を経て標準化(JIS規格)登録した。しかしながら、当該製品をどの様に魅せて認知させて行くべきか、またどの様に経営へインパクトを与えてゆくべきか術が定まらず、今回のブランド支援を依頼する経緯となった。



 開発の背景に、田中社長は関係省庁からのデータや国内外の展示会、有識者のセミナーなどへ積極的に参加。更にはユーザーと直接会い、現場で起きている不具合などに真摯に耳を傾け続けてきたことで、どこに市場機会(ビジネスチャンス)があるか精査していた。その結果、多くの製造業で起こる自社製品ありきの市場性の模索ではなく、冷静に情報を整理し、自社の強みを活かせる市場をある程度セグメントすることはできていた。したがって、あとは具体的に誰にどの様な価値観のもと自社製品を選んでもらうか規定することが必要となった。若手社員を交えながら会社の暗黙知となっているアイデアを形式知に置き換え、文字化することでターゲット層や共感してもらいたい提供価値を共通言語で表すことが段々と進んだ。その結果、単なる性能や価格本位となる価値基準でなく、顧客の深層心理にある「不」の解消を導くことができる情緒的価値や社会課題を解決に導く社会的価値の創造に至ることができた。あとは、当該製品をブランドとして意味づけするための「アイデンティティ(≒コンセプト)」の言語化が重要。それは、後に設計してゆく販売戦略や事前に想定されていた経営戦略の見直しなどがしやすくなり、本来の目的である「経営の好循環化」が知財(ブランド)をフックに形成しやすくなり、経営革新の一歩を踏み出すチャンスになる。

先行者優位基盤を整えた㈱田中電気研究所の今後の取組が非常に楽しみである。