スペシャルインタビュー
日本アムウェイ合同会社
プロダクトブランドマーケティング本部 本部長
瀬沼 哲彦氏 Vol.1
立教大学社会学部卒/中央大学大学院(MBA)卒
ニベア花王マーケテイング部で
マーケティングマネージャーとして
ニベアのブランドマネジメントに携わる。
現在、日本アムウェイ
プロダクトブランドマーケティング本部本部長として
日本アムウェイのマーケテイング戦略を構築。
■「日本の名湯」でマーケティングの醍醐味を知る
岩本 瀬沼さんの現在のお立場は?
瀬沼 日本アムウェイのブランドマーケティング本部長です。
サプリメント、化粧品、ホームケア関連の
3つのカテゴリーを統括しています。
岩本 大学を卒業して最初に就いたお仕事は?
瀬沼 学生時代からモノが大好きで製品を扱いたいと思っていました。
で、最初にツムラに入社してトイレタリー事業部に配属されました。
製品で言えば「バスクリン」や「日本の名湯」などの入浴剤ですね。
その事業部で営業を4年間、マーケティングを4年間やりました。
そこで、伊丹十三さん(映画監督・故人)や宮本信子さん(女優)と一緒に
「日本の名湯」のCMをつくって、商品が大ヒットしたんです。
それ以来、ずっとマーケティング志向です。
その後に、もう少し分野を広げたいと思いまして、
セガ・エンタープライゼス(現セガ)に転職しました。
ちょうどタイミング的に36ビットで当時、
次世代と呼ばれていたゲーム機が登場する時期で、
プラットホームが変わる時代だったんですね。
16ビットからマルチメディアへの移行期で、
「セガサターン」やソニーの「プレイステーション」が出てきた時代。
そこで3年ぐらいプロジェクトメンバーを務めました。
そのときのミッションは、
ゲームキッズやティーンエイジャーのゲーム機を、
ファミリー、サラリーマン、子ども、女性に広げていくというもので、
チャネルを拡大する仕事を担当していました。
コンビニ、GMS(総合スーパー)、
百貨店というふうに販路を広げていって、
セガサターンコーナーを作りました。
それまでファミコンショップしかなかったチャネルを拡大することで、
ターゲットを拡大していったわけです。
ますますマーケティングが面白くなって、
マーケティングという分野で自分のスキルを
広げていきたいという思いがあり、
ニベア花王に転職したんです。
そこで11年務めることになります。
「ニベア」というブランドに出会って、
ボディ、リップ、フェイスケア、メンズなど
いろいろなサブブランドを担当させてもらいました。
そこで、マーケティングという観点から
ブランドという概念の重要性に気づかされました。
「ニベア」はドイツのブランドだったので、
ドイツに何度か駐在してブランド・マネージメントや
ブランドフィロソフィーとかを叩き込まれて、今があります。
岩本 3年前にMBA(経営学修士)を取られたのは
何がきっかけだったのですか。
瀬沼 きっかけは田中洋先生(中央大学大学院戦略経営科教授)に、
私のブランド・マネージメントの体験談を学生に話してほしいと言われまして、
そのときにニベアのブランド・マネージメントについてお話をしたんですね。
そうしたら、すごく議論が盛り上がって、すごくいい雰囲気の中で
社会人の人たちが一生懸命勉強している姿に心を打たれました。
それを目の当たりにして、「できれば私もここで学びたい」と
その席上で言ってしまったんです(笑)。
岩本 なるほど(笑)。そこでの講演がきっかけだったんですね。
瀬沼 ええ、たまたまです(笑)。講師というより、
いちマーケッターとして話をしたところが、
そのビジネススクールのカリキュラムが非常に面白そうだったので、
試験を受けて通うようになってしまったんです。
岩本 日本アムウェイでお仕事をされるようになったのは。
瀬沼 ちょうど3年前です。
岩本 私がアムウェイを知ったのは今から 28年も前なんです。
瀬沼 それはどういう経緯で?
岩本 ある人を介してですね。
瀬沼 よくあるパターンです(笑)。私も経験ありました。
日本アムウェイが営業を開始したのが1979年ですから、
それはかなり初期のころですね。
■ビジビリティ(可視性)とブランド認知の関係
岩本 これまでアムウェイはどういうマーケティング戦略をしてきたのでしょうか。
瀬沼 基本的に、普通のメーカーのマーケティングと大きな違いはないと思います。
ただ一つだけ挙げると、マーケティングの「4P
(製品=Product、価格=Price、流通=Place、
プロモーション=Promotion)」の概念のプレイスの部分です。
流通チャネルのところが唯一大きく違うところです。
それはリテイルビジネス(小売業)として
流通を通して商品を販売するのではなく、
ディストリビューターを介して販売するというものです。
ディストリビューターは一時100万人いたときもありましたが、
現在は約70万人です。
その人たちが広告塔になって
製品を説明して販売するというスキームです。
製品に関するマーケティングという観点から言えば、
プレイス以外のプロダクト、プライス、
プロモーションに関しては一般のメーカーと同じですね。
私がこの会社に強く引かれたポイントは、
プロダクトに対する思い入れがものすごく強いという部分ですね。
それは私がこれまで経験してきた会社と同様で、
特に製品開発に非常に力を入れている部分は、
クオリティにこだわる花王と一緒ですね。
岩本 海外に関してはいかがですか。
瀬沼 売り方は日本とまったく同じですが、
消費者の受け入れ性が非常に高い国もあります。
例えば、中国ではすごく業績が伸びているのですが、
化粧品だと中国ではトップ3に入るブランドです。
アムウェイという会社の認知度も80%に達しており、
好感度も高い。そこが日本とギャップがあるところです。
国によって、あるいはアプローチの仕方によって
イメージや好感度に差があります。
岩本 なぜ、好感度や認知度が高いのでしょうか。
瀬沼 消費者に信頼を得るにはビジビリティ
(可視性)というのが大事だと思います。
アジアのほかの地域では
かなり大きなSC(ショッピングセンター)の中に
アムウェイのショップを入れている国もあります。
ですから、クレデビリティ(信憑性)が高い。
「あのSCに入っているアムウェイ」という
認識のされ方をしているわけです。
岩本 いわゆる安心できるブランドということですね。
瀬沼 消費者の身近にあって目に触れるというのは
ブランドにとって重要なことなのだと。
それはいろいろなブランドにも
同じことが言えるのではないかと思います。
岩本 日本ではビジビリティを高めることをまったくやっていないのですか。
瀬沼 実はもう始めている段階です。
ビジビリティというと、いろいろなタッチポイント
(コンタクトポイント)を増やすということですよね。
要するに、皆に見てもらい触れてもらう機会を増やすということ。
現在、渋谷にある東京本社の1階にすごく広い
「プラザ」というスペースがあり、
そこで製品を試すことができたり、いろいろな情報を入手できます。
そこに今年の9月に大きなショッピングスペースをつくりました。
プラザには誰でも入れますから、
そこに来ていただければその場で製品を買うこともできます。
もう一つ大事なことは、テレビなどメディアにどんどん出て行って、
アムウェイとはこんな会社なんだということを
伝えていくということです。
今年の11月後半からは、テレビ広告を以前の倍以上に投下します。
テレビだけでなく、雑誌、新聞、インターネットなど
いろいろなメディアでもアムウェイの製品を訴求します。
そのほかスポーツやイベントのスポンサードなどでも、
アムウェイという社名やブランドの認知度を
上げていきたいと考えています。
岩本 今まで、スポンサードはやっていなかったのですか。
瀬沼 長野オリンピックのメインスポンサーをやったりしていましたが、
それ以降はほとんど、そういった活動はしていません。
■ディストリビューターをサポートする仕組みづくり
岩本 渋谷の東京本社でショップを始められたということですが、
それ以外の店舗展開はあるのですか。
瀬沼 名古屋のプラザにもショップやクッキングスタジオを開設します。
そしてその他のエリアにも拡大していきます。
プラザは全国に8カ所ありますので、
そこを製品が体験でき、購入できる場所にしていきます。
岩本 プラザは一般のSCや百貨店ではないのですね。
瀬沼 独立したスペースです。
岩本 商業施設に出店しない理由は何ですか。
瀬沼 ディストリビューターの人数が多いので、
その人たちがアムウェイに特化した話を
ゆったりとできるスペースとなると
自分たちで居を構えるしかないのです。
アムウェイは製品を提供するだけでなくて、
ビジネスのオポチュニティ(機会)を
提供する企業でもあるんですね。
その説明をするための時間とスペースが
かなり必要になるんです。
岩本 CMなどのプロモーションが増えれば、
ディストリビューターにとっては活動しやすい環境になりますね。
瀬沼 実はそこがすごく大事なポイントなんです。
ビジビリティを増やすということは、
アムウェイの本社が消費者に直接製品を
売ろうとしているという大きな誤解を生むのですが、
そうではなく、商業施設に出店しないというのは、
ディストリビューターを100%信頼しているからです。
ディストリビューターが製品を売る役割を担っているわけですから、
ビジビリティを増やすのも
彼らがビジネスをしやすい環境を整えるというのが目的です。
広告にしても、製品を売るための広告というよりは、
ディストリビューターをサポートするための広告なのです。
岩本 それは会社の方針として一貫しているということですね。
瀬沼 それはどこの国も変わりありません。
一部、そういうスポットで製品を売りますが、
基本的にディストリビューターを通じて
商品を販売するというビジネスモデルは変えていません。
岩本 そういう意味で言うと、今までのアムウェイのマーケティング、
あるいはブランディング上で課題があったとすれば、
ビジビリティの部分だったということですか。
瀬沼 そうですね。もう少し、一般の方々に
アムウェイという会社名や保有しているブランドを
知らしめることがあっても良かったのかなと思います。
ディストリビューターが顧客のところへ行って会員に勧誘して、
その人たちが会員になるというのがアムウェイの基本スキームです。
そこのサポートが今までほとんどゼロに等しかったのを、
少しずつ増やすことによってディストリビューターが活動しやすくなる。
本社も消費者に向けてアプローチするけれども、
それはディストリビューターの活動をサポートするということなんです。
岩本 ブランドの広がり方で、国による文化の違いはありますか。
瀬沼 文化の違いもあると思いますが、
それよりも経済の発展の仕方に関連性があるのではないかと思います。
例えば、1970年代は日本の経済が高度成長で盛り上がっていた時代ですよね。
で、80年代にまたバブルがあった。非常に経済が発展している中で、
一般の消費者がエネルギッシュに製品を売る力があったから、
アムウェイのビジネスはどんどん広がっていった。
それが今の中国、インド、ロシアです。
そうした地域ではアムウェイのビジネスは拡大しています。
ビジネスの基本的スタンスはフェエス・トゥ・フェイスだと思うんですよ。
そこにツールとしてのデジタルや紙媒体がある。
やはり、最初の起爆剤というのは顧客接点、
つまり人が人に説明するというのが
ビジネスを大きくする要因になるんじゃないかと思います。















