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一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー >草間 淳哉氏 Vol.2

ブランド構築に販売戦略を取り入れた「コンテンツ・ブランディング」 後編

草間 淳哉氏 Vol.2

【プロフィール】

株式会社ウェブエイト 代表取締役社長
清泉女学院短期大学 非常勤講師

1977年生まれ。長野県出身。
大学卒業後、ソフトウェア会社に勤務。その後医療機器販売の会社に転職するが、自宅でできるアフィリエイトに魅力を感じ副業で始める。2年後には物販アフィリエイトで月100万円以上の副業利益を出し、ウェブマーケティングのスキルを独自に身に付ける。
地域の中小企業と顔を合わせたサポートをしたいとウェブコンサルタントとして28歳で起業、月1000万アクセス超えの長野県ポータルサイト「ナガブロ」を運営しながら、2008年に株式会社ウェブエイトとして法人化。集客の考案、ホームページ制作、その後のグロース(業績アップ)まで、一貫して企業と寄り添いながら結果を出していくサポートを行っている。
また、企業のウェブ担当者、広報担当者のスキルアップのために、社内向けのチームビルディング、ブランディングの研修やワークも行い、企業の理念浸透にも力を入れている。


今回は2016年度ブランディング事例コンテストで準大賞に選ばれた、株式会社ウェブエイトの草間淳哉さんに、受賞事例の「オヤジ・ブランディング×コンテンツ・ブランディング」を中心に、コンテンツ・ブランディングについてお聞きしました。

聞き手:平野史恵(株式会社イズ・アソシエイツ クリエイティブディレクター)


見つけた市場機会をもとにターゲットを絞り込む

平野

次に行ったのがセグメンテーションですね。


草間

コトラーのSTPマーケティングを活用し、過去の購買データを全て抜き出し、細かくセグメントしていきました。次にセグメントデータから、優良顧客をターゲティングするのですが、ここで言う優良顧客とは、一番高い機種を購入してくれるターゲットです。さらにペルソナを設定するのですが、この時ペルソナをかなり深掘りして設定していたので、これが後のブランド体験のところで生きてきたんです。


平野

そうして導き出したブランド・アイデンティティが「Like a ジャズ喫茶マスター」だそうですね。なぜジャズ喫茶のマスターなんですか?


草間

スタッフのみんなで、ペルソナが中古オーディオを売りたいと思った時に、誰に相談するだろう?という議論をしたんです。信頼できて安心感があって、高額買取をしてくれるところはないか、という相談に乗ってくれそうな人。それがジャズ喫茶のマスターだったんです。実はこれには現実のモデルがいて、近くにある「ジャズ喫茶884(はやし)」のマスターなんです。もちろん、本人には伝えていませんけどね(笑)。


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平野

そうやって具体的なブランド・パーソナリティを設定することで、スタッフ全員の認識が一致したというわけですね。


草間

はい。さらにここで深掘りしたペルソナをもとに、どのようなブランド要素がペルソナに刺さるかを考えて、一つひとつブランド要素を作り上げていきました。年金暮らしをしているペルソナが、一体いつからオーディオを好きになったのか? 当時どんなものに影響を受けたり、情報を得ていたのか。そこで出てきたのが「ラジオ技術」です。ラジオ技術とはオーディオマニア誌で、現在も主に高級オーディオの情報を掲載しています。ペルソナは、若い頃にこの雑誌を読んで育った世代なので、このデザインのイメージをサイトやロゴに使うことにしたんです。


ターゲットは誰なのか?

平野

確かに、競合のサイトを見ると「高額買取」ばかり目立たせて、文字もごちゃごちゃして見づらいし、どれも同じように見えますね。文字の大きさも、シニア層には小さいんじゃないでしょうか?


草間

そうなんです。ですからうちはシンプルでレトロなデザインにして、文字の大きさも大きく見やすくしました。それと、ブランド・アイデンティティに合わせて、スタッフは親しみやすい笑顔の写真です。とことん「ジャズ喫茶のマスター」だったら?というところに立ち返りながら、サイトのコンテンツにもこだわっていきました。例えば、スタッフの昔話やエピソードを隠さず出したり、この世代が懐かしむ「あの頃」の話を盛り込んだり。あの頃というのは昭和のジャイアンツが強くて、王さんや長嶋さんが活躍した時代です。ジャイアンツのVナインの打順に合わせて、オーディオを選手に例えると、なんてコラムもあるんですよ。


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平野

それは面白いですね。確かに他社にはない独特なコンテンツです。サービス面でも「ジャズ喫茶のマスター」を意識してやっていることはありますか?


草間

ジャズ喫茶のマスターはペルソナにとって頼りになる人です。ですから、オーディオに関する事だったらなんでもやってくれるだろうと思い、修理会社と提携してオーディオの修理も始めました。他には、会社にあるオーディオの機種すべてのマニュアルをスキャンして掲載しました。スタッフの中から、きっとペルソナだったら、自分が持っている機種以外のマニュアルも読みたいんじゃないか、という意見が出て。


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平野

アップしたマニュアルは実際に購読されているんですか?


草間

結構人気があるみたいで、よく読まれていますよ。またメールの本文は、ジャズ喫茶のマスターが書くような漢字が多くてとても丁寧な言葉遣いにしています。例えば「当店をご贔屓くださり」とか、「○○様のご健勝を心よりお祈り申し上げます」といった言葉を使っています。間違っても「!」は使わないようにしています。


平野

そしてここからがコンテンツ・マーケティングですね。


草間

コンテンツ・マーケティングの目的は、見込み客となるターゲットをサイトに集客することと、見込み客を購入顧客に育成し、さらにロイヤルカスタマーにしていくことです。そこでオウンドメディアでペルソナにとってためになるであろう情報をコンテンツとして作成し、定期的に発信しています。コンテンツは1~2週間に1度は配信し、ひとつの情報は3000から5000文字くらいのたっぷりした分量。通常のコンテンツ・マーケティングだと、主要となるビックキーワードだけを使いますが、ロングテールキーワードを合わせた複合キーワードで集客しています。ここまでやっているところはなかなかないと思いますよ。さらに閲覧だけで終わらないように「取り置きサービス」も始めました。これは登録してもらうと、最新のオーディオ買取リストを一般に公開する前に優先的に紹介するというものです。こうして見込み客をロイヤルカスタマーにしていくんです。


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コンテンツ・ブランディングの効果

平野

コンテンツ・ブランディングを始める前と現在では、どれくらい売上が変わりましたか?


草間

売り上げは当時の4.5倍くらいになっていますね。でも最近は競合もうちを真似し始めています。でも見ればすぐにわかりますけど、内容がとても薄い。そう簡単にはマネできるものではないんです。


平野

最近では他に、どのような企業のコンテンツ・ブランディングを手掛けているのでしょうか?


草間

ひとつは東京にある企業のエステ事業のリブランディングです。エステ業界は大小競合が多すぎて、チラシやリスティング広告を行ってもなかなか集客が難しいんです。そこでスタッフ全員でリブランディングを行いサブカテゴリとして、健康に特化した「メディカルエステ」を設けました。これに伴い、サイトや販促物をリニューアルし、スタッフのブログも始めました。今ではSNSで新しい顧客の流入も生まれるようになり、新規集客件数の目標を突破しています。その上、新規だけでなくリピート顧客も増え始めています。


平野

ブログはスタッフが書いているんですか?


草間

はい。やっぱりリブランディングして軸が決まったことによって、コンテンツの内容も変わり、スタッフが積極的にコンテンツの更新を行うようになりました。よくこうしたコンテンツを外注してしまうところも多いですが、やっぱりスタッフが書いたほうが断然おもしろいですからね。他には、農家なんていうのもありますよ。20代の若手農家の方が、ブランディングを通して若者のお米離れを改善させようと、SNSやブログを通じで情報を発信しています。


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コンテンツ・ブランディングが向いている業界はあるのか?

平野

コンテンツ・ブランディングはどの業界でも効果があるのでしょうか?


草間

飲食店や美容室、宿泊など、そのサービスを必要と思った時に、消費者が第一に考える強い検索サイトがある業界は向きませんね。コンテンツに引っかからず、検索サイトに流れてしまいますから。もしやるんだったらパーソナルをしっかり打ち出すことです。例えば旅館なら若おかみのブログとかね。今長野の老舗旅館のリブランディングも行っていますが、こちらもこれからサイトをリニューアルしていく予定です。


平野

最近は社員や店員さんのブログで顧客をつかんでいるところも多いようですね。渋谷の109ではサイトリニューアルにあたり、カリスマ店員が個人的な内容を紹介して人気を集めている、という話もありますね。今はこうした人間的なコンテンツが顧客を惹き付ける時代なのかもしれません。では、最後にコンテンツ・ブランディング成功のポイントを教えてください。


草間

大切なのは、チーム一丸となってコンテンツ・マーケティングまでの工程をしっかりやることです。きちんとリサーチしてデータを収集すること。競合がどれだけやっているかを把握できれば、ここを超えればいいという目標ができるし、自分たちで考えたブランド・アイデンティティの裏付けにもなります。途中で「あれ?おかしぞ」と思ったら戻ってやり直してもいいから、この工程は飛ばしてはダメです。スタッフが自分たちの会社のブランドをしっかり理解して進めていくことで、その先のコンテンツ・マーケティングもうまく行くようになるんです。下手でもいいから自分たちの想いを、ターゲットにしっかり自分たちの言葉で伝えていくことです。その想いがなければ、ターゲットもそれを見抜いてしまう。おそらくこれからは本物だけが残る時代になると思いますよ。


平野

ありがとうございました。