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一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 > スペシャルインタビュー >桜田 圭子氏 Vol.1

出版業界の常識を覆したマーケティングへの柔軟な発想源とは – 第一話

桜田 圭子氏 Vol.1 株式会社 宝島社 マーケティング本部 部長

聞き手:一般財団法人 ブランド・マネージャー認定協会 代表理事 岩本俊幸

【桜田氏のプロフィール】

1975年東京都生まれ。

広告代理店を経て、2000年宝島社入社。

以来、PR・販促などに携わる。

07年からは、広報の責任者および全出版物のマーケティングを行う。

08年に早稲田大学大学院商学研究科(MBA)修了。

書店員を招いた印刷工場見学ツアーや、「宝島社書店」など、

書店応援キャンペーン企画も担当。

2011年3月マーケティング本部新設とともに現職。


入社のきっかけ

聞き手

宝島社の前職は広告代理店とお聞きしましたが。


桜田

新卒で広告代理店に入社して、テレビ、ラジオ、インターネット、交通広告などの媒体を担当していました。そこで媒体についての知識を身に付け、2000年に宝島社に入社しました。


聞き手

最初から広報という仕事に?


桜田

中学生の頃から「広報」という仕事に興味がありました。広報という職種は当時、今よりも広く知られていなかったと思うのですが、当時よく読んでいた経営者の方の本に、広報という仕事がいかに企業にとって大切かということが書かれていました。それ以来、経営を身近なところで支える仕事をしたいと思い、大学新卒のときから広報志望で就職活動を行い、広告代理店に入社しました。


聞き手

それがなぜ出版社に転職を?


桜田

宝島社が98年から始めた企業広告を見て、そのメッセージに共感し、面白そうな会社だなという印象を持っていました。出版社に興味があったのではなく、宝島社に入りたいと思いました。


聞き手

宝島社はチャレンジしている企業というイメージだったのでしょうか。


桜田

とにかく個性があって面白そうな会社だなと思い、とても魅力を感じていました。企業広告だけでなく、商品をみても新しい価値を創造している会社だと感じていました。


聞き手

実際に入社してみていかがでしたか。


桜田

入社式の日に社長(蓮見清一氏)の話があったのですが、その日に、“この会社に入って正解だった”と直感しました。社長の個性がそのまま会社のイメージにつながっていてそれまで抱いていた宝島社の企業イメージと完全に一致したのです。



聞き手

具体的にはどういうことでしょうか。


桜田

経営に対する考え方が一つ一つ納得できることばかりでした。上下の垣根をつくらない、役職で呼ばない、男女平等、実力主義で家族主義・・・。また、社員は少数精鋭で、効率を重視するところなど。月1回大掃除があるのですが、単なる整理整頓ではなく業務を効率化するための仕事の棚卸しでもあるのです。そうした経営理念にとても共感しました。


聞き手

よく、採用募集時の会社イメージと実際の会社にずれがあると聞きますが、宝島社は桜田さんにとって会社の文化、風土がぴったりだったんですね。


桜田

そうですね。期待した以上の会社だと実感しています。


聞き手

入社されてから、まず、どういう仕事に就かれたのですか。


桜田

宝島社は私が入社するかなり以前からPRに力を入れていて、私も広報担当として10年間、広報・販促の仕事をメインに担当していました。


マーケティングに取り組んだ3つの理由

聞き手

それがなぜ、マーケティングの仕事までされるようになったのですか。


桜田

それは3つの理由がありました。1つは、出版社は、外から見ると緻密なマーケティングを行っているように見えるのですが、意外なほど組織的にマーケティングを行っていないことがわかりました。


聞き手

それは意外ですね。


桜田

広報なので、書籍や雑誌のプロモーションや販促で出版社、新聞社、テレビ局などを訪問していて気付いたのですが、組織的なマーケティングは宝島社だけでなく、どのメディア企業もやっていませんでした。作ることには一生懸命でも、売ることに関しては何もしていないのです。何もやっていないのに、世の中にこれだけベストセラーが出ているのは、ある意味、一人一人のマーケティングセンスがよほど優れているのだろうなと思いました。そして、それを組織として集約してみんなでマーケティングを行ったらすごいパワーになるだろうなと考えたのです。


聞き手

確かに雑誌自体がマーケティングマインドを持って、ターゲットを絞って出しているわけですからね。


桜田

そうなのです。個人個人はそういうことに長けているのですが、それまで組織としてはあまり機能していなかったのですね。


聞き手

なるほど。2つめの理由とは何だったのですか。


桜田

2つめは、書店だけではなくアマゾンやコンビニエンスストアなど、流通そのものに構造変化が起きてきて、いいものを作っても、お客さまに知っていただけないと売れないとということに気づいたことです。


聞き手

それはどういうことでしょうか。


桜田

逆に言えば、商品の価値をお客さまにきちんと分かっていただければ売れるということです。出版物というのは少しケアするだけで、ちゃんと売上げが伸びるものなのです。例えば、一つの商品がテレビに取り上げられたり、売るためになんらかのプロモーションをすると販売部数にそのまま反映されます。そうであるならば、弊社で扱う商品はプロモーションが効きやすい商品といえます。つまり、コモデティ(生活必需品)ではないので、今まで気にも留めていなかったものが、マスコミに取り上げられたりすると購買心理が働くということなのです。


聞き手

なるほど、マーケティングミックスの4Pの一つPromotionですね。


桜田

そして3つめは流通です。書店さんのご協力がいただけると非常に売れ行きが伸びるというのを実感したのです。例えば、書店さんに「現場では販促ツールとして何が欲しいですか」というアンケートを取ったところ、手袋やエプロンなどかなと思っていたんのですが、意外にも「POPを書く白い紙が欲しい」という回答が多くありました。POPの紙なんていくらでも用意があると思っていたのですが、お話を聞いて現状を初めて知りました。 


聞き手

実際にどうでしたか。


桜田

ある書籍の出版に合わせて書店さん数百店にPOPのツールを差し上げたところ、その本の売れ行きが非常に伸びました。書店さんに応援していただくことで実際に本の売れ行きにつながったのです。この3つの理由から、出版にも組織的なマーケティングが必要であり、ベストセラーは戦略的につくり出せる!と実感しました。


聞き手

出版業界はどういう状況だったのですか。


桜田

なんとなく出版業界全体が「何をやっても売れない」という停滞ムードでして、このままだと出版業界はまずいなという空気を感じていました。他社を見ても元気がないし、書店さんに行くと「実はうちの店つぶれるんだ」といった悲しい話が出たり…、ライターさんやカメラマンさんも「出版は厳しいよね」と暗い顔をしているし。これはどこかで空気を変えないと本当にまずいなと感じていました。微力ながら、私になにかできることはないかと思い、マーケティングの理論を体系的に学ぼうと思いまして、06年に大学院(早稲田大学)に入学しました。


聞き手

忙しい仕事をしながら、よくそんな勉強する時間が取れましたね。


桜田

時間は限られているので、本当に10分、15分を大切にしようと考えて、この10分間で何をするかというのを突き詰めて時間管理をしていました。


聞き手

どういうタイムスケジュールだったのですか。


桜田

平日は19時から23時ぐらいまで、週に4日大学院に通っていました。会社の理解と協力がありましたので、休むことなく通うことができました。土曜日は朝9時からゼミ。大学に通うのはまったく苦痛ではなかったのですが、課題がきつかったですね。課題が毎回出るので1日2コマの授業を取っていると毎日2つは課題をこなさなければならないのです。ですから、睡眠時間は毎日2~3時間でした(笑)。それでも、働きながら勉強することに意義があると思っていたのでつらくはなかったです。


聞き手

それはすごいことですね。くじけそうになったことはありませんでしたか。


桜田

いいえ、吸収することが多くて楽しかったです。もちろん、マーケティングの理論だけでなく、そこで一緒に学んでいるメーカーや金融、コンサルタントなど他業種の方々との交流や、実務家の先生方から学ぶことも大きかったですね。いかに出版業界が遅れているかを痛感しました。


聞き手

それは刺激を受けますね。


桜田

メーカーさんがいろいろなマーケティング活動をやっているにもかかわらず売れないという悩みを聞くと、出版業界は何もやっていないので、これはある意味、未開の地だなと(笑)。何かやれば絶対にマーケットに響くと思いました。


次回へ続く

※掲載の記事は2015年2月時点の内容です。
掲載内容が変更となっている場合がございますので、ご了承ください。